えんじゅ:158号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCL)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫

 渋谷幕張中学・高等学校の2学期が終了する。

 冬休み後、再び登校するときは21世紀3年目となる。

 混迷の世紀と云われ、先行き見通しのつきにくい時代の陰鬱を突き毀すような明るいニュースが 暮れに突如伝わった。

 ノーベル賞受賞が小柴昌俊博士(物理学賞)と田中耕一氏(化学賞)の両氏にあったことである。 同年2人受賞は本邦初のことであり、2000年ミレニアムのこちら3年連続、4人の受賞は、米国に 次ぎ英国と肩を並べている。

 日本人として、まことに誇らしく素直に喜びたい。

 そして、11月15日、本学園にとっての三年連続のノーベル賞受賞者を迎えてのフォーラム(科学フォーラム東京) が実現した。3人の科学者=利根川進・医学生理学、江崎玲於奈・物理学そしてスタンリー・プルシナー(米)・医学生理学= による講演、質疑はまことに興味津々。更に錦上花を添えて、今年の受賞者小柴昌俊博士も駆けつけてこられ、 21世紀を担う若者達・中高生に刺激的な話をされたのであった。物理学を通じて「科学」を解説 された江崎博士の話”私達は科学者の偉大な先達の肩に乗って世界を見ている”や、生命の神秘を 巡って免疫の研究が受賞対象となった利根川博士の研究のきっかけとなったオペロン説(ジャコブとモノー)の話、 そして地球上の生物が全てその活動の設計図として持つ遺伝子(gene・DNAとDNA)を持たないまま増殖する 「異常プリオン(狂牛病の原因)」発見のプルシナー博士の話等、どれもこれから自分の人生を作り上げるスタートにつく 若い者達にとって実りの大きな話であった。

 教育の目的は「自己実現」にあると言われている。

 マズロー(米心理学者)によれば「自己実現」Self actualizationとは自己の可能性を十分に開発し、 発展させることであり、人間の持つ最高の欲求であると言う。つまりそれぞれの生まれついての天与の力(才能・能力) は簡単には現実化出来るものではないが、努力・状況(教育など)で最大限に近いところまで発揮出来るようになることと 考えたらどうであろう。

 今年度の進路講演会にお招きした斉藤孝先生が、生徒諸君に一人一人が「人にすすめる心の1冊」を 持つことを推奨した。

 その例として、エッカーマンの「ゲーテとの対話」やドストエフスキーの作品を挙げ、又生徒の1人が ニーチェの「この人を見よ」を挙げたの大いに激賞したのは、まさにこの「自己実現」の過程にある 若者達に実現actualizationの手本を示し、見通しをつける為に必要なことだからなのである。

 どうぞ、一人一人がこれからも「人にすすめる心の一冊」を持ってほしい。

 前回も触れた巨人軍の松井選手の大リーグへの挑戦も、まさにこの自己実現への道を、自らの力・可能性に 夢をかけての進路選択であったと思う。

 そして自調自考の幕張の若者達の輝かしい未来を祈って、新しい年を待っている。


えんじゅ表紙へ

学校表紙(もくじ)へ


平成15年(2003) 1月 7日改訂