先生からの発信(書道)

 悠久の風に吹かれて

        2000.10.26 更新                                                                  CRT 1024×768(大きいフォント)

高校2年生 『書法学術研究報告』発刊


 本校の修学旅行は、北京・西安・上海です。西安には、後漢以来の膨大な碑石のコレクション「西安碑林」があります。書道の授業では中学3年時より、文部省の指導要領に準拠しつつも、教材を西安碑林に展示されているものに変更しています。生徒が修学旅行で実際に原碑を見た時、「あ!ここ書いたことある!」という感動はいかばかりでしょう。
 高校2年生の授業は、生徒一人一人がそれぞれのテーマを決定することから始まります。そして全員が異なる自らの学習計画に基づいて授業が展開されます。少人数だから出来ることですが、「今日、何するの?」という質問は、生徒ではなく先生がします。
 このレポート集は、本校や地元の図書館をはじめ、県立図書館などにしげく通い、授業で質問を繰り返した、まさに足でまとめた努力の結晶です。そして現地(中国)での博物館見学、資料収集により完成しました。
 一部の生徒は、そのために第二外国語の中国語の授業を履修し、中日辞典を必死に引いて原文を読みました。瑠璃厰の榮寳斎で扇子と印材を購入し、その扇子に水墨画を描き、賛を書し、自ら刻した印を押して作品を完成させた者もいました。
 また、半坡遺址の土器の刻画符号は焼いてから後にどうやって刻したのか?、絵の具には鉄とマンガンが使われている、とすれば鉄があったのではないか?当時(BC4000頃)の技術で砂鉄から鉄筆を作れないのか?といった質問もありました。そこで、化学の東谷先生に砂鉄からの製鉄実験をしていただきました。
 この授業は書道科だけではとても対応できず、各教科の先生方にも多大なご協力をいただいています。生徒はこうした学習を通じ、学ぶとはどういうことかを肌で感じています。

● 『書法学術研究報告』をご希望の方はメール(自宅・学校のアドレスは使用しないでください)で住所・氏名をご連絡ください。無料で恵送いたします。

書道科 中高4か年学習計画



 書道部の生徒が中心になってベニヤに彫り、複製した皇甫誕碑。碑頭は紙粘土で作りました。
 (原碑は西安碑林第2室)
    本校では、中学3年より、芸術の授業が始まります。

中学3年

 1学期は、楷書の基本点画の書き方(用筆法)・結構法などを学習した後、高校教科書を使用して、《九成宮醴泉銘》・《孔子廟堂碑(碑林2室)》・《建中告身帖》・《雁塔聖教序(大雁塔)》・《龍門造像記》・《鄭羲下碑》などの古典を臨書します。
 それらを中心に各自の好きな古典を選び、釈文を参照して任意の個所を選定して、半切1/3以上半切までの大きさに臨書作品を制作し、学園祭に発表します。
 2学期は行書に進み、《蘭亭序》・《集字聖教序(碑林2室)》・《争坐位稿(碑林2室)》などの古典を臨書します。さらに、仮名の基本的な筆使い・単体いろは・変体仮名・各自の名前の連綿を学習した後、《高野切第三種》・《蓬莱切》などの古典を臨書します。
 3学期はニュージーランド研修のため授業数が少なく、漢字仮名交じりの書として《源氏物語》を臨書・鑑賞します。

高校1年

 1学期前半は楷書で、中3で学習した範囲の復習に加え、《皇甫誕碑(碑林2室)》・《顔氏家廟碑(碑林2室)》・《道因法師碑(碑林2室)》などの古典を臨書します。
 そして、こうした古典学習で得た技法を生かし、古典に依拠した創作作品制作を行います。書体は楷書、大きさは半切1/2とし、文章は漢籍から任意に選び、参考とする古典から集字して手本とします。一方、半切以上の大作を希望する者は、好きな古典を選び、釈文を参照して任意の個所を選定し、臨書作品を制作します。なお、この作品を学園祭に発表します。
 その後、行書に進み、《興福寺断碑(碑林2室)》・《智永千字文(碑林3室)》・《太宗温泉銘》などの古典を臨書します。
 2学期は《子昴行書帖(碑林4室)》を半切に臨書作品制作を行います。その後、草書の《遠宦帖》・《書譜》、篆書の《泰山刻石》、隷書の《曹全碑(碑林3室)》・《乙瑛碑木簡》などの古典を臨書します。
 3学期は仮名です。基本的な筆使い単体・変体仮名いろは・連綿を学習した後、《粘葉本和漢朗詠集》・《蓬莱切》・《寸松庵色紙》・《近衛本和漢朗詠集》などの古典を臨書します。

高校2年

 1学期は作品製作です。生徒の感性や能力を効果的に引き出すため、主に修学旅行で見学する西安碑林等に展示されている碑石・文物の中から、九州を希望する者は日本の古典を中心に好きな古典を選び、釈文を参照して任意の個所を選定し、半切以上の大きさに臨書作品を制作します。まず、各自年末までの学習計画を作成します。その計画に従ってそれぞれ異なった教材を、各自のペースで学習します。結果、生徒の個人差に関係なく自主的な取り組みが可能となります。修学旅行との関連もあることでもあり、個別指導による自己教育力の再生を図ります。
 2学期は書論・書道史です。1学期に学習した古典を中心に書論・書道史を研究します。そして、修学旅行を利用して資料を収集し、レポートを作成します。生徒は、自分が臨書し、研究した古典を実際に見、本物にふれた感動を得ます。その後、全員の作品の写真とレポートをホームページ形式に編集し、CD−ROMにします(上記参照)。
 3学期は仮名です。《高野切第一種》・《升色紙》・《継色紙》・《寸松庵色紙》を臨書し、散らし書きを学び、任意の和歌一種を散らし書きで創作します。その後、漢字仮名交じりの書として《風姿花伝(金春本)》を鑑賞し、原文を読んで行きます。

高校3年

 いよいよ最終学年です。受験を目前にして、心身ともに落ち着かない日々が続きます。高3では、書道の諸活動を通して、個性豊かな表現の能力と鑑賞の能力を高めるとともに、書の文化と伝続を尊重する態度を育てることをねらいとします。慌ただしい日々の中、書道T・書道Uで培った技術と精神を生かし、心休まる異次元空間に身を置くことができるよう努めます。
 また、書道科への進学を希望する人には、理論と実技試験に対応した演習を中心に講座を展開します。具体的には本人との面談により個々の授業計画を作成します。具体例としては、楷書は《楽毅論》・《孫秋生造像記》・《高貞碑》・《化度寺碑》、行書は《興福寺断碑(碑林2室)》・《松風閣詩巻》・《帰去来辞》、草書は《書譜》・《自叙帖》、隷書は《礼器碑》・《木簡》、仮名は《名家家集切》・《本阿弥切》・《小島切》・《針切》・《関戸本古今集切》・《巻子本古今集》などの古典を臨書します。漢字仮名交じりの書は現代詩の創作を学習します。加えて和漢書道史・書論を学び、入試問題演習を行います。


卒業生、中国に書法留学

今日までに、
 大塚純さん(10期生・東京女子大学日文)  →西安交通大学書法研究センター
 小林恵さん(10期生・東京学芸大学大学院) →北京語言学院、杭州の中国美術学院
 西山尚志君(11期生・大東文化大学中文)  →北京大学
に留学しました。