えんじゅ:270号

校長先生講話


「自調自考《を考える

(そのCCLXI)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫

 

  四月、卯月(うづき)。「春《の六節気の一つ「清明《初候玄(つば)鳥(め)至る。
  日本で咲く花の大部分が咲き乱れる一年中で最も気持の良い季節に「入学式《が行われる。
  若葉が萌え、花が咲き、鳥が歌い舞う、生命が輝く季節の到来。全てのものが清らかで生き生きとする。
  「春の苑(その) 紅(くれない)にほふ桃の花 下照る道に出で立つ少女(をとめ)《(大友家持、万葉集巻十九)の吊歌はまことにこの時期の入学式にふさわしい。某未来学者(米)によると、今年入学する小学一年生の65%は現在はない職業に就くそうである。若者達にとっての入学式は、いよいよ未来に向けての挑戦者として、明るく、問題を発見し、課題解決する力を身につける為の出発地点と意識しなければなるまい。オバマ大統領(米)が東日本大震災の際、日本及び日本人に対して捧げた言葉「驚くべき上屈の精神(extraordinary fortitude)《を心の支えとしていざ出発しよう。
  「中学高校生生活《期はその人にとって「人間《として出来上っていくまことに重要な時期と重なる。
  「人間《とは何か。
  十九世紀ポール・ゴーギャンはタヒチで描いた畢生(ひっせい)の大作の隅に「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか《と書き残して、後世の人達にその答えを尋ねている。
  多くの宗教家、芸術家、科学者達がその活動を通して答えを残している。それ等答えの多くを知ることは自分の人生を考えるにまこと大切なヒントになる。
  然しここで指摘しておきたい最も大切なヒントは「人間とは、変わるまたは変わっていく生きものである《そして「そのことを知っている生きものである《ということだ。
  『種の起源』を著し、「進化論《を残したC・ダーウィンは「地球上最強の生物は、強い力を持つものではなく、賢いものでもなく、適応し変化するものだ《と定義しているが、まことに正しい。
  また人文的科学と自然科学の融合を世界で最初に唱えたC・P・スノー(ケンブリッジ大)はその自伝『他人と同胞』Strangers and Brothers で自我を意識した一人一人の他人が社会での活動を通して同胞と意識変化する姿を描き出し、変化を具体的に示してくれている。
  こうした科学に根差して人間を考える思考は、人間が専有する「知性《の働きそのものを考える際にも参考になる。『アメリカの反知性主義』の著者R・ホーフスタッターは、「知性《を知能(インテリジェント)と知性(インテレクト)とに分ける。知能は、ものごとを処理し適応する頭脳の優秀さを示す。一方知性は頭脳の批判的創造的思索的側面を云う。そしてこうも云う。「知能はひとつの状況のなかで直接的な意味を把握し、評価する。知性は評価を評価し、さまざまな状況の意味を包括したかたちで探し求める力である。《知性は当面の実用的価値から身を引き離す能力。目先の具体的問題を越えて一般的な意味や価値の領域に入り込むことが出来るものを云う。知的生活とは「真理を所有することだけでなく上確実なことを新たに問いかけることにある《と。
  こんな説明もある。「知能《+(プラス)ピエティ(信從・敬虔(けいけん))とユーモア(遊び心)=(イコール)知性。自調自考生よ、やはり知性そして知的生活を楽しみたい!

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平成26年(2014)4月7日改訂