えんじゅ:184号


第二十一回 槐祭



渋幕府の楽市・楽座


   

 去る九月十日・十一日の両日、第二十一回「槐祭」文化の部が、史上最高を記録した昨年を越える一万一千有余名の来場者を得て、盛大に開催された。

今年のテーマは「渋幕府の楽市・楽座」。初めて「渋幕」の語がテーマに冠せられたのが第六回の槐祭。しばらく潜め、第一六回以降再び登場してきているのは、内的充足の時代を経て、カルチャーセンターとして外に発信しようとする姿勢の反映か。内容的にも年々進化している。

 シカゴ大のフィールド数授によると、他人や社会の出来事との関係を拒否することがアイデンティティーになっている今日は、企業や国家とは別の連帯が必要だという。その意味でも、文化祭を通して得られる「至高体験」は有効であろう。

 「後夜祭のキャンプファイヤーの炎も衰えたというのに校庭は余韻で一杯である。(中略)しばらくすると何人かの生徒が校庭へ向って走り出した。見る間にそれは群集となり、歓声を上げる。何処ともなく校歌が聞こえてくる。誰から言われたわけでもなく極自然に大合唱となる。」(第二回槐祭より抜粋)




<文化祭実行委員長より>

祭りのあと       高校 2年 中川

 今年の槐祭も多くの人の協力のもと、無事終えることができました。

昨年の槐祭終了直後から今年のための準備をしてくださった先輩方や、夏休みの講習の合間を縫って集まっていた生徒。そして当日の暑い日射しの中、受付をしてくれた文化祭実行委員と教職員の方々に至るまで本当にありがとうございました。

 その中で私が一番感動したのはとある高三の先輩です。槐祭二日目が終了して人が疎らになった時分、後夜祭のため忙しく走り回っていると、片手にチリトリを持った男の先輩が階段から下りてきました。彼は誰に言われることなく四階から一階まで階段を掃いていたのです。一万人の来場者が訪れただけあって、階投はいつも以上に汚れていました。それを見かねた彼は自主的に掃除をしてくれていたのです。マジ格好良かった。

 改めて槐祭がたくさんの人達に支えられていることを感じました。そして私もいつまでもそんな人達の一人でありたい。




槐祭を終えて      中学 3年 西本

 第二十一回文化祭のスローガンは織田信長の開いた楽市楽座に因んで「渋幕府の楽市楽座」。今年も例年に負けずとても活気にあふれた素晴らしい文化祭にすることができたと思う。今年が初めてであった中学一年生も、最後であった高校三年生もきっと最高なものを体験できたのではないだろうか。

 今年は新しい企画として生徒会と合同でインフォメーションセンターの設置をした。客の中にはパンフレットの校内図面の見方が分かりにくいと、インフォメーションセンターに来て聞いたりしていた。これからも今年の反省等を生かしてよりよいサービス性を追求していきたい。

 私は委員長として短い期間全力で勤めてきたが、トラブルやミスがあまり起こらなかった為忙しいながらもわりとスムーズに事を運ぶことができた。この場を借りて、多くの仕事を手伝ってくれた副委員長の河原さんにお礼を言いたい。どうもありがとう。お疲れさまです。

 来年も今年のように楽しく充実した槐祭を皆で造りあげよう。




  団体       収益金    寄付先
バザー        184,051
中高図書委員会  157,610
(古本市)
茶道部        10,044
飲食団体      88,740
合計         440,445   日本赤十字社
仮装コンテスト   65,000
1 年 E 組             難民を助ける会
教育講演会     50,000   あしなが育英会
教育講演会     20,000   ユニセフ



槐祭(文化の部)総括




生徒部

 二日間とも好天に恵まれた本 年度の文化祭(槐祭文化の部) は、昨年に引き続き一万人を超 える来客を迎え、大盛況の中で 幕を閉じた。特に一般公開の十 一日は生徒達のエネルギーとお 客様の期待感が渾然一体となっ て、気温を上回る熱気が校内に あふれていた。

 本年度のテーマは「渋幕府の 楽市楽座。」日本家屋の瓦屋根 を模した歓迎門をくぐると、そ こは日常の風景とは別世界。机 に向かって勉強している表情と は全く別人のような生徒達が、 手作りのパフォーマンスを所狭 しと繰り広げている。歌・踊 り・映画・演劇・演奏が華やか に行われる中、今年もお化け屋 敷と模擬店には人気が集まり、 長蛇の列が山来ていた。

 企画全体を眺めてみると、中 学校は自分たちのテーマに即し て研究・演示をしたものが多い のに比べ、高校は娯楽的傾向に 流れているという例年の感は否 めないが、企画そのものの密度 は濃くなっており、文化祭とい う異次元においては、十分許容 範囲といえるだろう。

 印象的だったのは二日目の最 後。文化祭終了の放送が流れる 中、突然強い雨が降り出した。 この雨のせいで後片づけは大変 なことになってしまったが、祭 りで極限まで達した熱を冷ま し、日常にすみやかに戻るには、 格好の橋渡しになってくれたよ うに思う。

 何はともあれ、大きな事故や トラブルもなく二日間の文化祭 が今年も無事に終了した。アン ケートなどを元に細かな点には 修整を加え、来年の文化祭がよ り実り多きものになるように今 から少しずつ考えていきたいと 思う。

 最後に、本校の文化祭に関わ ったすべての方々に、関係者を 代表して厚く御礼申し上げま す。



風市・槐祭今昔




田村

 「はじめっ!」 の声があがると、生徒達の血汐 は遡行し怪力乱神が宿る。昨日 までの「日常という結界」を椅 子、机とともに押しやって瞬く 間に「まつり」という空間を構 築してみせる。その素早さは、 年々組織化され、近年は草原を 往く風の如くである。

 黄泉の闇に回帰したいかのよ うに「お化け屋敷」を造り、香 具師のように屋台を並べ、渡し 舟の乗り場のように「呼び込 み」に奔走する。

 たった四日間の起・承・転・ 結にも23年の歩みが在る。  例を挙げる。  ひとつ目は室内楽部である。 高校棟一階ホールで演奏された が、終始「超満員の静寂」が支 配しており時折、金色の糸のよ うに音が観えることがあった。

 ふたつ目は「自調自考論文」 の展示である。派手な看板も、 呼び込みも無いにも関わらず、 絶えず10〜20人の読者が在室し た。30分、一時間と作品に目を 通す人も多かった。年々向上す る作品の面白さが伝わっている のだろう。

 ところで、今年の来場者数は 一万人を超えた。開校時の五倍 である。このことについて考え てみたい。

 私見だが、祭とは「回帰願望 の還元儀式」だと思う。世の中 の流れ、という目に見えにくい ものの中で時として人は不安に なる。不安は「自己」を分裂さ せ更に大きな不安を造る。その 時、心は「感動」を求める。心 は「感動」が分裂した「自己」 を統一してくれることを知って いるのである。感動している時 人は自分自身に還るのである。

 一万人という人々が生徒を感 動させ、一万人の人達も怪力乱 神の生徒に「根源的なもの」の 存在を思い出していただけたと 思う。「槐祭」とは、埋め立て 地域に生じた「風市」である。



オペラ鑑賞教室

新国立劇場(初台)



 夏休みを目前にした七月十六 日、高二のオペラ鑑賞教室が実 施されました。これは、毎年新 国立劇場の本公演と同じ内容の ものを、広く高校生を対象とし て開催されているもので、本校 では七回目の参加になります。

 今年の演目は、久々にプッチ ー二作曲「蝶々夫人」。物語の 舞台は開国間もない長崎。その 上音楽には、「お江戸日本橋」 「君が代」等聞き慣れたメロデ ィも登場、初めて接しても親し みのもてるものとなっています。

 今回の舞台美術は、直線と曲線 を使って「家」とそこに続く 「坂道」を表現するという新し い構成。様々な場面を表現する 照明使いも見事で、大変美しい 空間が創り上げられていました。 参加した高校一一年生は大変静か に鑑賞し、蝶々夫人が、夫の帰 りを待つ幕間では、間奏曲が流 れる中、静けさと共に客席に緊 張感が漂っていたのが印象的で した。

 これを機会に、将来、より多 くの生徒がオペラに興味を持っ てくれれば嬉しいと思います。

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平成17年(2005)10月15日改訂