えんじゅ:190号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCLXXXl)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


二〇〇六年三月、渋谷幕張中 学・高等学校は、二十一期生を 送り出した。  そして、「自調自考」の旗幟 の下に参集した新たな仲間を迎 え、新らしい歴史がスタートす る。


 咲き満ちてこぼ るる花もなかりけり

 入学の子の顔 頓に大人びし

               高浜虚子


 二十一期生も、 自調自考の渋幕校 に衿らしい意味の ある伝統と歴史の 一頁を刻んでくれた。  (「進路についての報告」別頁 参照)

 本校教育の中核は「自調自 考」と云われるもので、「自律 的精神」を育むところにある。 つまり、一人一人が「自己の 人生の作者である」と考えるこ とに人が生きることの本質的な 価値がある。そしてそう考える 道徳的理論を前提として、「人 格的自律権」=自己の生の作者 として意識する権利・義務の総 称=を育て、根付かせることが 本校教育の本質であると考えて いる。

 実はこの「人格的自律権」こ そが、近代社会の成立する根幹 となる権利である「基本的人 権」の中核となるものである。  「自調自考」が本校教育の 中核となる所以はこゝにもあ る。

 ところで、自調自考には「自 己意識」Self Consciousnessが 必要不可欠である。  自分自身についての意識。自 らがどんな人間であるかを知る ことがなければ、自調自考も出 来はしない。

 自己意識は、個性や独自性、 または創造性や主体性を形成す るべースとなるものである。ま た自意識過剰になってしまう と、孤独や不安をひき起こすも のともなってしまう。  現代の人々のアイデンティ ティの喪失、自分が何であるか わからないことに悩む問題は、 自己意識の極端な稀薄から生ず ると考える。

 意識は、脳という思い込みの 激しい錯誤に満ちた装置で行な う。その為自己認識を客観的に また正当に行なうことは、考え ている以上に難しく、至難の業 といってよいのである。  魂や精神を含めた自分を映す 鏡はない。そこで人は、自分以 外の人との関係を通じて己を類 推して把握するしか方法はな い。最近の研究(川島隆太教授 の脳活性度実験)によると、碁 ゲームで、相手が人間の場合と コンピユータの場合では脳の働 きに大きな差があったという。

 最も高次な脳機能とされる想 像力や知性をつかさどる脳・前 頭前野は人間を相手にしたとき のみ活動するという。  人間の脳は相手とコミュニ ケーションしながら、刻々シス テムそのものを変えていき、人 間同志互いにそうすることでい ずれ共感しあうところまで行き つく作業を前頭前野で行なって いる。そして相手と自分の中身 に響きあうものを見出した時、 初めて自分自身について知るこ とが出来る。自分ひとりでは、 己を知ることは出来ない。

 自調自考の学校で沢山の友人 をと願う所以はこゝにある。  楽しい学校生活を。

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平成18年(2006)4月11日改訂