西暦二〇〇九年、平成二十一年、
己丑の年を迎え
る。
己は陰陽五行で
「土」の性の「陰」。
木の幹が語源の十
干の六番目。
個性を顕わにす
る活溌な年の意と
いう。
丑は十二支の二
番目。動物では牛
が充てられる。
洋の東西を問わ
ず、新しい年には
新しい夢が語られる。新年の夢
は、旧年中の快挙であったノー
ベル賞に四人の日本人が受賞し
たのニュースにかかわるものと
なる。
自然科学、人文科学を問わず、
科学の進め方は、「要素還元主義」
が王道であった。
理系、文系といった分け方は、
デカルト (仏) から始まると云
われているが、「要素還元主義」
もデカルトの提唱したものであ
る。
ある現象を見て、そこで生じ
ている反応や運動の規則性を記
述するだけに止まらず、より基
本のレベルに遡ってその原因や
法則性を明らかにするという方
法である。つまりどの様な場合
にも通用するという普遍性ユニ
バーサルを追求するということ。
この方法は大成功を収めた。
最初の成功例として云われて
いるのが、ケプラーによって発
見された惑星運動の三つの現象
論的法則を、ニュートンが二つ
の質点間に伐く万有引力と運動
の法則によって完全に解明した
ことである。
この方法はその後三百年以上
にわたり有効性を発揮して学問
の発生・発展の元になる人間の
感じる不便・不快、不幸の解消
に大変役立ってきた。
今回受賞した素粒子物理学分
野では、物質の究極構造を原子・
原子核・核子(陽子と中性子)・
クォークへと辿ることを成功さ
せ、生命作用の担い手を器官・
細胞・蛋白質・アミノ酸・遺伝
子(DNA) へと解明出来てき
たのは、専らこの方法によって
であった。
現代の科学技術文明の成立は
「要素還元主義」による。
ところが、一九六〇年代に入っ
て、この要素還元主義一辺倒が
見直され、新しい学問方法が台
頭してきた。複雑に見える現象
や行動を、個々の要素に分解す
るのではなく全体像として把握
してその中からその法則性を明
らかにしようという研究である。
要素還元主義が通用しない問題
に対して、「複雑系」という新し
い科学によって解明しようとす
る研究のことである。
系は多数の要素から成り立っ
て、要素間の非線形の相互作用
が伐くといった「地球環境問題」
「気象や気候変動」「生態系」「脳
科学」「人体」「地震や火山」等
の問題全て複雑系科学の対象と
なる。まとめて云えば、相互作
用系の集団的性質を、「カオス」
(簡単だが複雑) 「ソリトン」 (秩
序運動)、「フラクタル」 (自己相
似性)等といった概念で頭身大
のおれらの問題に取り組もうと
している。
過去の経験を伝え、未来を語
り合える人間のみに備った能力
がいよいよ求められてくる。
自調自考生よ、どう考える。
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