四月、卯月。
農耕の準備は、
ほとんど終わり、
いよいよ「植え月」
となる。転じて
「卯月」。
「きっぱりと冬
がきた。八つ手の
白い花も消え、
公孫樹の木も箒」
のようになると続
く高村光太郎の
詩。この厳しさの
なかで「自然」は
優しく春を迎える準備に入る。
そして「暑さ寒さ
も彼岸まで」と云われる一年のう
ち最も好適な季節となる。
竹の芽も茜さしたる彼岸かな
芥川龍之介
昼と夜の時間がほぼ同時間と
なる「春分の日」をおくる。
そして新学年、「入学式」。
そこで、旧年度を回顧し、これ
からのメッセージを考える。
平成二十一年度には、日本の将
来を考えるに大きな意味をもつ
二つの出来事があった。
一つは「政権交代」であり、も
う一つは「大学進学率が同年代の
50%を超える」というインシデン
トである。
私の好きな言葉で「青年即未来」
というのがあるが、若者達にとっ
てこの二つの出来事はまことに重
要なメッセージを伝えている。
まず、「政権交代」は、日本の
民主主義の成熱度を示す指標と
考えることが出来よう。
多様な市民のニーズに応える
のが政治の役割と考えるなら、政
権交代は普通にあることである。
つまり日本の民主主義が一歩前進
したと捉えることが出来よう。
民主主義政治の成熟は、市民一人
一人の基本的人権の実現を一層充
実したものとすることを意味す
る。このことは、基本的人権の中
核的権利と考えられる「人格形
成権」=一人一人の人生は自己の
責任において作り上げるという
権利=がいよいよクローズアップ
して来るということを意味する。
近々実現するであろう「十八
歳成人」という考え方や、「裁判
員制度」はまさに「自己責任」
を考えるという意味での文脈に
あるものである。
又「大学進学率50%超」は世
界の流れ(欧米では常識。一番高
い国は80%超)でもあるが、私達
の国では、大学教育の質保証(学
士課程の質、又学位そのものにつ
いての国際的通用性に至る迄の一
連の目標項目)という形で議論
がなされている。
近々発表される「学術会議」
からの「学士課程の質保証レポー
ト」や、ユネスコ提案による「(ア
ジアにおける)高等教育地域条
約」(欧州では既にポローニヤ・
プロセスという形で実現。)締結
議論などはまさにこの文脈にあ
る。曾てマーチン・トローUCLA大教授の指摘した「大学教育
のユニバーサル化」がはじまった
のである。この流れは、当然「知
識基盤社会」「生涯学習社会」の
実現につながるもので、これから
の社会で活躍が期待される若人
達にとっては重要な示唆となろ
う。そして一生学び続ける社会で
は「大学教育の質」とは職業に
関わる専門知(厳密性と明晰性
が求められる)と自然歴史文化
関わる諸学問=教養=の二つの分
野での教育研究が求められる。(続)
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