四月、卯月。
卯の花の咲く月の意。一説には稲を植える月、植月の略の説もある。農耕の始まりの意がある。この月は、一年中もっとも気持のい
い季節で、弥生から卯月にかけ一年中で日本の花の大部分が咲き乱れる月でもある。
万葉集巻十九にある大伴家持の名歌「春の苑紅にほう桃の花下照る道に出で立つ少女」は、この時期の日本人の気持ちが表現されている。 四季の豊かさの中で、日本の一番素晴らしい時に学校では「入学式」を迎える。 東北関東大震災の暗いニュースのなかで、気を取り直し若者達の新しい出発を祝う。
竹の芽も茜さしたる彼岸かな
芥川龍之介
昼と夜の時間がほぼ同時間となる「春分の日」、「彼岸」をおくり、いよいよ新学年となる。
ここで「中学・高校」の時代とは、どんな事をする時代なのかについて、しつかりと考え入学式という出発の餞としてみたい。
この時代は一言で述べれば、「自分(自己)をしっかりと見極める力」と「自分の回りと外をはっきり見渡せる力」を身につける時代で、その為に努力する時代であると考える。
自分を見極める力」によって、若者達は自己のアイデンティティを顕在化する(エリクソン)。
その時アイデンティティは、「自分は何者であるか」の自己定義となり、取り替えのきかない自己の存在証明となる。 もともと「身元」とか「正体」の意味を持つアイデンティティという言葉はこのように人々の構成する社会との交差をきっかけとし
て総体的な自己イメージを「自己同一性=アイデンティティ=概念」に定式化する。
ここで気付いてほしいことは、アマルティア・セン教授(ハーバード大・ノーベル経済学賞)の次のような指摘(世界文明フォーラム2005) である。
「人間一人ひとりは、複数のグループ(社会)に属し、それぞれにアイデンティティを感じている。ある人は女性でフランス国籍
を持つが、シンガポール出身でインド人を祖先にもち、英語を活しイスラーム教徒で、歴史学者で環境保護の活動家で…などそれぞれのグループに属し、その中で『Interact』しているのである。このうちどれか一つのみを取り上げて、『このひとは…だ』と決めつけることは間違いだ。」
たしかにアイデンティティにかかわって個人の属する複数のグループには時として対立、矛盾、競合が生ずる。その際、どのグルー
プに属するかを自分で自由に選び、必要で誠実な対話をすることで、自分にとって求められる必要且つ充分なアイデンティティが明
確になってくるのである。
そして、その為にこそ一人ひとりの学習と努力の積み重ねが必要となる。例えばコンピュータを考えてみる。コンピュータの演算手
続を指示するアルゴリズムという算法は九世紀アル・フワーリズミー(Al-Khwarismi・数学者・アラビア)が考え出し、零、十進法はインドで生まれアラブ人により世界に広められ、紙は中国人が作り出した。
こうしたことを知り理解した処で今世界の文明の主流となっている西欧文明・代表としてのコンピュータで本当に理解することがはじまる。自調自考生どう考えるかな。
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