えんじゅ:306号  


 

 

地に足を付けて
副校長 田村


昨年の酉年は「商売繁盛・収穫」と言われていました。そういえば昨年は飛び回ることが多く、本校も色々な形で取り上げられることが多い年でもありました。翻って今年は戌年、「守りの年」と言われます。と言っても、ただご利益を待つだけでなく、戌年には勤勉で努力という意味もありますので、ご利益を自ら手繰り寄せるような努力も求められるでしょう。来年は亥年ですから、突き進んでいく為にも、今年を準備期間と捉え、地道に努力するのも良いかもしれません。色々なことにチャレンジするもよし、勉強し知識を蓄えるもよしの戌年です。  また今年は、渋谷教育学園が主催する高校生国際水会議(「WATER IS LIFE 2018」)が開催されます。世界各国の高校生との交流を通じて、自らの成長に活かしてもらいたいと思います。自ら立つために、自己責任の意識を持った上で自分の意思に従って行動や判断などを決定することが出来るようになるために、様々な能力を持つことが必要です。なぜなら自分で選べる選択肢を持っていなければならないと考えるからです。自立し生きていくために、色々な力を身に着けておくことが大切です。どんな時にそれが役に立つかはまだわかりませんが、戌年をその意味での準備の年として、色々なことに地に足を付けてチャレンジしてみてください。
 

冷暖自知
副校長 松井


 新年おめでとうございます。今年も新しい事に挑戦してみませんか。現在やっていることを少し改めてやってみるとか、今まで興味があったのに、迷ってやってなかった事などにトライしてみるとか、身の周りの簡単な事でよいのです。そして、それらが積み重なって、納得のいく将来の自分を思い描けるのだと思います。  冷暖自知 という言葉ご存知ですか。あれこれ考えるより自分でやってみろ という意味です。鎌倉の刀鍛冶の店の話ですが、店の後継者が「親方は一度も刀の鍛え方、研ぎ方など教えてくれなかった」と言い、そして「お陰で、やっと一通りの事は身に着いた」と言っていた。将棋や囲碁の世界でも同じ事が言え、師匠の教えを受けるのではなく、自分で師匠の挙動から学び、自分でやってみて、知識や技能を身に付けていくので、師匠が「一局教えてやろう」と言う時は「見込みが無いから破門するか」と考える時のようですよ。注意しましょう。  では誰かに疑問や質問をして教えを受けてはダメなのでしょうか。そうでは無いのです。質問し、疑問を解決することは必要なことですが、その後、それを自分の物にするときが、冷暖自知で、本当に身に付けたいのであれば、自分でやるしかないということです。
 

出会いと別れ
高校教頭 深村 


 昨年は多くの卒業生と再会を果たせた。残念ながら、恩師と仰ぐ先輩や、同い年の同僚とのお別れの席だったというのが悔やまれる。  思えば、学校は出会いと別れが繰り返される場である。人生のわずかな時間ではあるが、瑞瑞しい感性の時を共に過ごし、かけがえのない一時に創り上げていく。永遠に色褪せない記憶となるゆえんだろう。  十一月にホームカミングディも開催された。握手と抱擁。再会に言葉は不要だ。久しぶりの校長講話に在学時を懐かしむ。次の瞬間、我が子の泣き声や走り回る様に現実に引き戻され、申し訳なさそうな顔。しかし校長先生は笑顔。いい雰囲気だ。 今年も多くの渋幕生との笑顔の邂逅を期待したい。
 

干支
高校教頭代行 沼


 明けましておめでとう御座います。  何度も新年を迎えながら、気にした事がなかった干支について調べてみた。犬猿の仲と称される一昨年の申と今年の戌の間に、その緩衝役の如く酉が鎮座し、また、桃太郎の鬼退治に同行する役者が三年かけて勢揃いした。申・酉・戌という干支の漢字は、発祥の中国では、季節ごとに変わる植物の様子を表す漢字を当てたという。日本では一般への浸透を目的に、江戸時代の中頃、その漢字に動物を当て、さらにそれぞれの動物を通じて一年を応援する意味を込めたと言われている。  普段、何気なく見過ごしていることを調べてみると思いがけない発見がある。皆さんも周囲に目を配り、新たな発見を求める一年にして下さい。 人の繋がり 中学教頭 添田 幸男  昨年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏はこう言っています。「リーマンショック以降、富める者とそうでない者の差は広がり、自国ファーストの考え方や、弱者を排除する極右思想が台頭する中、大事なことは、人と人の繋がりである」と。彼の言う「繋がり」とは何なのでしょうか。人と接するとき、自分との違いには敏感になりますが、似ているところには案外鈍感です。違いに鋭く、共通性を認めない不寛容性こそ私たちはいつも注意しなければならない、そんな想いが彼の言葉には込められているのではないでしょうか。私たちは、意識された寛容さの中でしか他者と繋がることはできないのかもしれません。今年はイシグロ氏の作品を読んでみるつもりです。
 

新たな年を迎えて
中学教頭 藤井


 新たな年を迎えた。昨年は様々な変化があった。今年はどんな変化があるのか、期待しながらも、不安に思う。  中一の諸君、昨年は正に大きな変化のあった年であろう。渋幕という新しい環境で、自身がどのように変化したかを考えてほしい。誰からも善き変化と言ってもらえるだろうか。そして何より、自分として満足のいく変化であったろうか…。まだ幾らでもそのチャンスはある。  高三の諸君、この四月からこれまでにない大きな環境の変化に身を置く。新たな環境は自身を大きく変化させる。ただ其処に身を置くだけでも、自然に変化する。しかし、それでは勿体無い。どうせなら、自分の思うように変化させたい。それが自分を育てるということだから。 信頼を得るためには 中学一学年主任 後藤 聡  新年あけましておめでとうございます。新しい年を迎え、思い新たに二〇一八年の生活を始めたことと思います。  四月からは早くも先輩になります。先輩の背中を見ながら生活を重ね、不安を感じたときには励ましてもらい、順調な時ほど慎重に進めるよう戒めてもらったことと思います。そんな頼りになる先輩になれるよう三学期を積極的に過ごして欲しいと思います。その上で自分の理想とする先輩像を追求してください。厳しく接することだけが先輩としての使命ではありませんし、優しいだけでは物足りなく感じられてしまいます。  そこで一つアドバイスをします。自分ができていないことを後輩に求めてはいけません。まず自分がやってみせることです。それは専門的なことだけではなく、学校生活全般にわたることです。当たり前のことを当たり前にやってのけるのが先輩としての務めだと思います。挨拶をする、ルールを守る、人に迷惑をかけない、友人を思いやる、授業に集中するなど難しいことではないと思います。先輩としてふさわしい成長した姿を見られる日が来ることを楽しみにしています。
 

新しい年を迎えて
中学二学年主任 本村


 厚生労働省が毎年実施している「国民健康栄養調査」によると、二十歳以上の男女で一日の平均睡眠時間が六時間未満の人の割合が二〇一五年に約四割となった。同じ条件で統計を取り始めた二〇〇五年以降で最高となった。二〇〇三年と二〇〇四年は十五歳からの統計があり、そこから類推すると中高生はもっと高い数値になりそうだ。スマホの普及率急伸と時期が重なるのは偶然だろうか。  日本は世界でも有数の寝不足国家らしい。ランドヨーロッパという調査機関によると、睡眠不足による経済損出額をGDP比でみた場合、日本は約三%で調査対象五か国(日、米、英、独、加)のうち最大であったという。睡眠不足は、職務遂行能力の低下などを通して生産性を下げるというわけだ。  睡眠研究の世界的権威である柳沢正史氏が、先月行われ、本校も参加した科学の甲子園ジュニア全国大会の基調講演で、「中学生は八時間三十分の睡眠が必要」と強調されていた。  昨年は、人に与えられた時間は限られていることを衝撃的に思い知らされる年であった。生活を整理し、睡眠を確保し、毎日が生き生きとし一年を共に目指そう。
 

憧れの青いシャツ
中学三学年主任 荒木


 新年明けましておめでとうございます。今年はいよいよ義務教育を終えて高校生になり、中学の時に眩しく見えた先輩達と同じ制服、青いシャツを着ることになります。今までの三年間で得られた様々な経験を土台にして、さらにBブロック後半の飛躍を目指してほしいと思っています。  学習面、部活動、友達や先輩後輩との人間関係、その他それぞれの学校生活の場面で青いシャツにふさわしい中身へとレベルアップできるといいですね。四月には高校からの新しい仲間達も増えます。いろいろな面で気持ち新たに再出発できるチャンスでもあります。まずは残り三か月で中学のまとめを悔いのないようにしっかりやりましょう。  三学期の合唱祭は中学最後で最高の思い出になるように各クラスの素晴らしいハーモニーを楽しみにしています。
 

新年おめでとうございます
高校一学年主任 久保田


 今年は戊戌年です。他の干支と同じように本来は犬とは無関係に時間の経過を表す言葉ですが、普段は「いぬ」と呼び慣わされています。「いぬ」は子沢山であることから安産のお守りとして妊婦さんにも人気です。  戊と戌は短い横棒のあるなしの違いですが、戊も戌も冬を迎えて小さく縮こまって堪え忍ぶ様子を表しているそうです。そして漢字の中に隠れているように、戈を研いで春に飛び出す準備をしているとも解されるそうです。これらのことはどれもこじつけではありますが、つねに「次は良くなる」と考えるきっかけを得ようとする前向きな気持ちは大切に受け継いで行きたいものです。  高校三年生はいよいよ受験の季節となり、自己のよりよい進路に向けて努力を続けていることでしょう。体調を崩さないように気を付けて欲しいと思います。高校一年生は理系、文系の科目選択が終わって自分の望む進路を具体的に考え始めたことでしょう。「次はより良く」を願って毎日が楽しく充実した日となるよう努力を続けようではありませんか。
 

新しい時代を前に
高校二学年主任 大平


 平成が三十年を迎えた。  今年の干支「戊戌」は、私にとって元に戻る歳回りなので、新年の感慨もひとしおである。  しかし、それ以上に深い思いを抱くのは、今年が平成最後の一年間になるということである。ご存じの通り、来年の四月末日に天皇陛下が生前退位なされ、皇太子殿下が新天皇に即位されることが決定したからである。  振り返れば、今から約三十年前に昭和から平成に元号が改まった時、私はまだ三十歳前の若僧であった。馬齢を重ねながらも何とかここまで来られたが、暗中模索、紆余曲折、試行錯誤、の繰り返しの中で、自分の道を歩んで来たのが「平成」という時代であった。そんな平成最後の一年間と、自分の環暦が偶然にも重なるとは、何かの因縁を感じるのである。  とは言え、私は昭和への思い入れも強い。昭和の初期に「降る雪や明治は遠くなりにけり」と詠んだのは中村草田男だが、私を育ててくれた「昭和」という時代も、風雪とともに遠いものになってしまうのだろうか。  新しい元号が何になるかはまだ分からないが、諸君の世代が背負って立つことは間違いない。そろそろ新しい時代を迎える身支度を始めようではないか。
 

言葉を得ること
高校三学年主任 吉田


 世には流行があり、一年のうちに新しく言葉が生まれたり、新たに注目されたりします。その中には時が過ぎれば忘れ去られる楽しくも軽い語もありますが、世相を含み時代性を刻む言葉は残ります。昨年の報道等で注目された「忖度」も、決して新しい概念を示した語ではなく、すでにあった事実が露呈して注目されたものです。  「忖度」は、生活文化の次元から流行の原因となった政治・経済の分野まで、向き合うべき日本性を示しているゆえに、今後の記憶に刻まれる語なのでしょう。この他にも、意識を向け続けなければならない語は多くあります。例えば「貧困」「格差」「生きづらさ」は日常の記事に定着し、「豊かさ」をめぐって多面的に様々な意見が述べられます。社会の多事象の関連と連鎖は、この議論を深めていく必要を強く促します。  現在を考え未来を見つめるための言葉は、さらに見出されていくでしょう。ただし、本質を突く言葉は、報道からの知識ではなく、生きることへの主体性に伴ない誰にも湧いてくるに違いありません。卒業する三年生は、この春から立場が変わります。その生き方によって、彼ら自身が言葉を得ていくことを願います。