駅を出ると、人がたくさんいる。技術都市はそれなりに栄えているようだ。
町には大学やたくさんの研究所があり、新たな技術の開発が行われている。
街を歩いていると、博物館を見つけた。
この街にはどんな歴史があり、どんな研究が行われているのか気になり、私は博物館に入ってみることにした。
博物館では様々なことが紹介されていた。
精密機器が空気がきれいな場所でないと作れないこと。
15年前、空気のきれいな場所にこの街が政府によってつくられたこと。
その後、技術の研究からモノの製造まで行う技術都市として発展したこと。
この街が全国シェアの9割以上を占めている部品がいくつもあること。
日本どころか、世界中の企業がこの街にやってきていること。
どれも、2024年には想像もつかなかったことだ。
私はとある展示を見つけた。
どうやらこれは、手をかざすだけで忘れかけた大切な記憶を文字に起こせる機械らしい。
試しに手をかざしてみる。
画面に出てきた文字は、、、
・・・え?
私は何が言いたいのかよく分からなかったが、今までの記憶をたどってみた。
・・・・・あ。
昔の記憶が蘇る。
中学生の時に好きな人がいたこと。
高校に入ったときにばらばらになってしまったのに、しばらくの間ずっと好きな人のことを考えていたこと。
それでも高校生活を送るうちに、少しずつ忘れてしまったこと。
長い時間がたって、今の生活は今の生活で幸せだけど、心の中ではわだかまりが残ったままだった。
ずっと忘れていたのに、何でだろう。涙がこぼれてくる。
私はその場に座り込んだ。
誰もいない展示室の中で一人、涙が止まらない。
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気づけば、窓の外には夕焼けが広がっていた。
どんなに時間が経っても、自分の心は過去にとらわれたままだった。
夜空に映えるビルの明かりが美しい。
私は過去と決別するべく、夜の技術都市へ駆け出した。