技術都市の駅から、同じ服ばかりを着た集団が乗ってきた。服には奇妙なピクトグラムが印刷されている。

増税反対のピクトグラム

その中の一人に話しかけ、どうしてこの服を着ているのか聞くと、来月から消費税が30%になるようで、彼らは増税の抗議活動に行くところらしい。
20年前は10%だったので、3倍になることになる。時の流れは残酷だ。
少子高齢化で納税者がいないため、こうなるのも仕方ないだろう。

私はこれほどまで納税者が減って、人手不足は大丈夫か気になり、聞いてみると、
「減った分はAIがカバーしています。私は技術都市で自動運転の研究をしています。この列車の自動運転システムも私たちが開発したんですよ」
そう言って、スマホで研究所の写真を見せてくれた。

彼らが見ているスマホの左上には、「7G」という表示があった。
20年前は5Gだったというのに、もう5Gや6Gの時代は終わったようだ。
鉄道やバスはほとんど自動運転になっている。時代は変わっていく。

------

列車は山を越え、海沿いを走る。
窓の外には美しい海が広がっていた。
窓から見える海は、あの時と全く変わっていなかった。

時が経って山の集落が廃墟になっても、巨大な技術都市ができても、消費税が30パーセントになっても、自然は悠久の時を歩んでいる。
やはり人間は自然には勝てないと思いながら、私は列車に揺られていた。

ーー完ーー

この物語はフィクションです。

ほかのパターンを見る

TOPに戻る