日本学生科学賞内閣総理大臣賞に本校生徒の3年E組の千田直子さんが受賞しました。
論文の題目は、 生命誕生の起源 −アミノ酸生成の試験内シミュレーション− です。
このHPでは、その研究の概要と千田さんの感想を掲載することにしました。
尚、下の写真が今回受賞した千田さんです。
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地球上に生命が誕生してから、38億年−。今から38億年前の地球で何が起きたのか。
いかに生命が誕生してきたのか。それは、太古から現在に至るまで人々を魅了し続けてきた
最大の謎の1つである。私は「無機物からアミノ酸を合成する」という、生命誕生への最初の
一歩と考えられている物質の化学進化の一幕をシミュレーションすることに挑戦した。
※現在の主説としては、
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世界で初めて原始地球での物質の進化のシミュレーションを成功させた人がミラー
(米)で、彼の実験が、かの有名な「ミラーの実験」だ。ミラーは、下のような装置を
つくり、5リットルフラスコにメタン、アンモニア、水蒸気、水素を入れて、内の
気体を循環させながら、火花放電をおこし、それを丸々1週間続けた。その結果、
斜線部の液体中から生命体に欠かせない物質 −アミノ酸、拡散、etc− が生成
されているということが確認された。これは、当時地球をとりまいていた大気
(原始大気)が、雷によって大きなエネルギーが与えられることで化学反応をおこし、
アミノ酸などが合成・誕生した、という場面のシミュレーションである。この実験は、
化学進化説を裏付ける実験として大変意味のあるものとして注目されている。
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| ミラーの実験をそのまま高校にある装置を使って行うことは、不可能である。 そこで、改良していくことで、オリジナルなシミュレーション実験を行った。 まず、装置(写真1)を組み立てる。右から左へ、装置全体に水素を流している。 右から、最初に三角フラスコは安全 に水を試験管中には、メタノール・アンモニア ・水を、ガラス管(反応塔)にはフィラメントを入れ、2番目の試験管は何も 入れず氷を入れたビーカーの内で冷やす。ミラーの実験と比較すると、原料のメタン をメタノールへ、与えるエネルギーを放電からフィラメントによる熱へと改良 している。ここでフィラメントに電圧をかけ(写真2)、数時間そのままにしておき、 原子海洋モデルにあたる試験管にたまった液体を分析する。ここにアミノ酸が生成 されていることが言えれば、無機物からアミノ酸への物質進化のシミュレーションの 完成となる。 |
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実際にアミノ酸合成に成功したのかどうかは以下のような方法で確かめた。
まず、おおまかにアミノ酸の有無を調べる方法としてニンヒドリン反応を
用いた。ニンヒドリン反応とは、アミノ酸が有る場合には、特定の試薬に
対して紫色に呈色するというものだ。原子海洋モデル部分にたまった液体
によるニンヒドリン反応は下の写真のようになった。このことからも、アミノ酸
が合成された可能性が高いといえる。
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| 次に、アミノ酸の種類を特定すべく、ペーパークロマトグラフィーという 方法を用いて、生成液を分析した。(生体の構成するアミノ酸は約20種ある) これは、3紙を用いて、試料を展開した際に、紙上を移動した距離の比率が 物質によって異なることを利用したもので、私の実験の生成物は(写真4の 右3本)、グリシンのもの(写真4の左1本のうちの斑点、ちなみにその上は アラニン)と一致したため、私の実験においてアミノ酸の1種であるグリシン が生成されたことが証明された。 |
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| このことから、私の実験は、初期段階における生命誕生の起源を超簡易に シミュレーションすることに成功したといえた。 |
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以上、単にまとめさせていただきましたが、ここに至るまでには本当に試行錯誤の連続でした。でも、本当にやりがいがあって、完成したときは感動でした!
いつも助けて下さった盛口先生、高田先生、箕浦さん(紹介写真の右側)には感謝、感謝です。 そして、このページを読んで下さった皆さん、まだまだ謎でいっぱいの”生命”について、お互いに思いをはせてみましょう。神秘的でありながらも、化学的な不思議が私達を驚かせてくれます。何と言っても、「今、そこにあなたがいること」の原点の不思議でもあるのですから−。 P.S.渋谷幕張高校の化学部は、恵まれた実験設備、器具の中で、自由に実験できる部活です。カルメ焼きや色ガラスなど、すぐに出来る楽しい実験から、色々な研究まで幅広く、とにかく実験に挑戦しています。我校の文化祭でも公開実験を毎年行っているので、ぜひお立ち寄り下さい。又、渋谷幕張高校に入学された方、ぜひぜひ化学部に体験入部してみて実験することの楽しさを、友達、先輩、先生と実感してみて下さいね! |
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平成11年(1999年)12月22日(水)改訂