えんじゅ:128号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCXXI)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫


1学期が終了し、夏休みを迎える。

生徒諸君は、その毎日の生活の過ごし方の主導権を学校から取りもどす。 中学・高校の生徒諸君の日常は、平均的には、睡眠7時間半、学校で6時間、 学校外学習2時間半、テレビ1時間半、その他(文部省調査)となっているが、 これからは毎日10時間以上の時間をどのように使うかが、1人1人の考え で決まる期間となる。進路を目前として、夏休みこそ天王山と考え計画を練って いる人、自分の課題(テーマ)を決めてその為に時間活用を考えている人、又 どうするか、まだ迷っている処の人等々いろいろあろうが、とにもかくにも 夏休みの6週間こそ、1人1人が自分で生活計画を立案し、「積極的目標」を 持って実行達成を期する時、まさに校是「自調自考」の精神を発揮することが 期待されている。そしてこの結果が、その後の学校生活にも大きな影響のある ことでもある。どうぞ充分に実りのある6週間にしてほしい。

処で「目標」と言えば、今秋から日本でも「大学認定制度」が発足する。 1930年代に米国で始まったこの認定制度は理工系の大学や学部を対象に、 専門教育のカリキュラムを評価するほか、外国語能力、社会に貢献出来る素養 などを審査し、一定の教育レベルが保たれていることを「認定する」制度で、 この制度=日本技術者教育認定機構(JABEE)=によって、大学(日本の) の閉鎖性脱却、世界中に始まっている資格の世界標準化の流れに追いつくことを 目指しているのである。

90年以上の歴史をもつ米国の認定制度では、認定された大学の学部生又は大学 院生が「プロフェッショナル・エンジニア=PEという技術者資格を取る為の 1次試験(PE試験・工学基礎能力検定試験)」を受験でき、合格すると4年以上 の実務経験の後本試験を受け、「PE」となる。こうした技術者資格は、「北米 自由貿易協定エンジニア」「汎欧州エンジニア協会連合」「APECエンジニア 協定」等により、今や世界に通用する資格になりつつある。

こうした動きの背景には、今や理工系の研究者の能力評価の基準に、従来の 新しい科学的知識を獲得したかという側面と同時に、同じ重さでその科学的 知識を実用的なことに応用したかを問われるという変化があることを知って いなければならない。つまり論文を書くと同時に特許を取るということが 重視されるようになったということである。この両方の能力を持つ研究者が 高い評価を受けるという考えも、「日本では技術者の定義も評価もあいまい であった。国際的に活躍する専門的な職位として認められる技術者を」と 主張する考え方も、日本の学問の世界の「国際化」の結果、表出されてきた 新しい考え方である。

文・理を問わず、国際的視野をもつ幅広い知識と教養、そして常に好奇心を 持って学問の世界に挑む姿勢が若者には一層求められてくるのである。充実 した夏休みにしっかりした「心の習慣」を。


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平成11年(1999)9月 1日改訂