えんじゅ:138号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCXXXI)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫

 本年も、学園最大の行事である槐祭(文化の部)が終了した。 今年のテーマは「しぶまく畑〜収穫の秋〜」である。

 四季のある豊かな自然に恵まれた日本では、 その文化もその恵みを充分に反映したものとなっている。 我国文学史上最高のエッセイといわれる。「徒然草」(吉田 兼好) には「春暮れてのち夏になり、夏果てて秋の来るにはあらず。 春はやがて夏の気をもよほし、夏より既に秋は通ひ」とある。

 つまり、日本文化は、その繊細 な感受性で微妙に移り変わって いく季節を味わい楽しむ処から 生まれているのである。

 私達にとって、収穫の秋は、 移りゆく自然の一断面を教えて もらい、その変化のなかで生き る実感を意味する。

 さて例年にもまして、今年の 槐祭の展示、企画はすばらしい ものがあった。6000人を越す来 場者の皆さんも、その充実ぶり を堪能されたことであろう。私 個人としては、現在企画委員の 1人として展開中の教育改革国 民会議が検討したテーマの1つ の「奉仕活動」を取り上げた 「第3回デイベート招待試合」、 趣味として関心のある音楽部、 吹奏楽部、又室内楽部の充実ぶ りに関心をもったが、演劇活 動、理系文系の各展示、クラス 参加等々も大変面白く興味深い ものがあった。そして美術や書 道の両部、運動関係のドリルチ ーム、又国際色豊かな国際部展 示、日本伝統の茶道部のお手 前、クッキング部、図書委員会 そして例年のように特色のある 歓迎門等々まことに見事であっ た。それから忘れてはならない のは、卒業生の協力も得られ た、ポスター、パンフレットの 素晴らしさ。

 処でこの秋は、読売新開、NHK主催による「ノーベル受賞 者によるフォーラム」の一環と して「中高校生対象の教育フォ ーラム」の第1回の開催(11/25・ 本校講堂)が決定している。本 校では中学生全員と高枚生有志 の参加。ノーベル賞受賞者とし ては大江健三郎氏(94年文学 賞)、ハロルド・クロート教授 (96年化学賞)の両氏が指導さ れる。詳細については後程説明 されるが、今年の秋は大変な収 穫の秋となりそうな予感がある。

 われわれ人間の行動や能力は 2つの要因によって定まるとさ れている。1つは持って生まれ た”天性”(DNAにより代表 される遺伝情報)。もう1つは 環境による”育成”(遺伝外情 報取得)である。そして地球上 の生物を見るならば、その行動 や能力は”天性”遺伝情報に基 づく固定されたプログラムに支 配されていると云える。然しお そらく人間だけが”育成”遺伝 外情報のソフトプログラムを行 動や能力の基盤として生活して いるのである。このことをジョ ン・デユーイ(米教育学者)は 「教育は外からの指示によるも のより、動機づけられた生徒自 身の活動に待つものである。」 という(自調自考)。他人によ って自分が作られるのでなく、 自分が自分を作ることに徹する ことで満足出来る自分が育つの だ。収穫とは、このことを指し ているのだろう。


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平成12年(2000)10月19日改訂