えんじゅ:155号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXLZ)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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夏休みを迎える。生徒諸君は、 毎日の生活の過ごし方の主導権 を学校から取りもどすことにな る。中・高校生の日常は、平均 的には睡眠7時間、学校で6時 間半、学校外学習2時間半、テ レビ2時間、移動1時間余。 夏休みは、毎日10時間以上の 時間をどのように使うかが、一人 一人の考えで決まることになる。 進路目前に、夏休みが天王山と 考え計画を練る人、自分の学習上 の課題を決め、それにまとめて集 中した時間活用を考える人、体力 向上或は旅行を計画する人、読書 計画を実行する等この6週間こそ、 一人一人が自調自考の精神を発揮 して、計画、実施が期待される重 要な時期である。更にはこの結果 が2学期からの学校生活に大きな 影響をもたらすものであることを 充分意識して実りある6週間とし てほしい。 ここで、今回岡野弘彦(歌人) の文章を紹介する。 『短歌は日本人の心の遺伝子の ようなもので、あの形やしらべに 添って思いを集中し、言葉を凝ら してゆくと、いつしか心はわが身 の思いを乗り越えて、永く久しく われわれの祖(おや)たちが思い かさねてきた、世々の創意や情念 に遡源し、それとひびきあってゆ くのが感じられる。……いま急速 に日本人の心のありようが変化し てゆく時期に……若い人々から刻 々に縁遠いものになって、作る力 や読み解く力の失われてゆく文語 の生命力を、少しでも長く伸ばす ことができたらと願う心がしきり である。このすばらしい文体が、 私達の時代に消えてゆくのは余り にも悲しい。』 そして、文化庁は今年6月、日 本語の大切さや「美しい日本語」、 「日本人の日本語能力」に関する 国民の意識調査の結果を発表した。 3000人の16才以下の男女を 対象とした調査では、7割の人が、 「日本語を大切にしている」とし、 何故大切にするかの質問には、「 日本語は日本人であるための根幹」 「日本語は日本文化そのもの」「 日本語でものを考え、感じ、善意 の判断をする」と答える。そして 9割の人が、「美しい日本語はあ る」と考え、「思いやりの言葉」 「あいさつの言葉」「素朴ながら 人柄がにじみ出る言葉」「控えめ で謙遜な言葉」「短歌、俳句など の言葉」がその例として挙げられ ている。一方、気になるのは10 代で、「つとに(夙に)」「けん もほろろ」「よんどころない」「 ゆゝしき(由々しき)」「とみに (頓に)」といった言葉は半分以 上の人が意味もわからないと答え ている。1つ1つの言葉には独特 の世界・文化があり、言葉を知ら ないというのは、その世界・文化 を知らないことを意味する。日本 語には日本語が作り上げて来た世 界、美しい文化があり、英語にも 勿論ある。「1つの言語を知るこ とは世界がそれだけ広がることだ (ゲーテ)」という意味はこうし たことだ。若い感性豊かな時期に 思い切って世界を広げてほしいも のだ。 当面、この休みは、大いに読書 (古典を含め)し又年長の人と話 し合う機会を持って、自分の世界 ・文化を広げ知ってほしい。
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平成14年(2002) 7月25日改訂