えんじゅ:179号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCLXXT)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


三月、弥生、渋谷教育学園幕張高等学校第二十期生が卒業。 卒業生もいよいよ八千名を越し、二十一世紀の世界で活躍す る人達も、同窓会槐の名の下にいよいよ意気軒昂たるところである。

『年を以て巨人としたり歩み去る』虚子

平成十六年十二月、私は、ユネスコ国内委員会委員に任命された。 (文部科学大臣)そこで、今年度最後のレポートとして、ユネスコの紹 介をし参考に供したい。

第一次大戦の終わった一九四五年に、人類が二度と戦争の惨禍を繰り返さない ようにとの願いを込めて、結成された国際連合(United Nations) の専門機関として創設されたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、 他の専門機関(国際労働機関、国際通貨基金等17機関)と協力して、 世界平和の実現を目指している。

1984年、米国及び英国等がユネスコを脱退するという事件が あったが、2003年10月に復帰している。本部と事務局はパリにお かれ、現在事務局長は松浦晃一郎氏(前駐仏大使)で、事務局   職員総数は1946人、そのうち日本人は59人である。

ユネスコ憲章前文の「戦争は人の心の中で生まれるものであ るから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。 Since wars begin in the minds of men,it is the minds of men that the defenses of peace must be constructed. 」は大変有名である。

そこで諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じた国際 平和と人類の福祉の促進を目指して各種の活動を行なっている が、パリの本部と加盟各国政府の国内委員会(私が任命された 役割)と各国内各地のユネスコ協会(目本連盟本部は東京恵比 寿)の三者がユネスコファミリーと言われ協力活動をしている.

例えば、1990年国際識字年をきっかけとして、日本ユネスコ 協会連盟が開始した独自の国際協力活動は「世界寺子屋運動」 World Terakoya Movementと呼 ばれ、非識字者(世界で8億6千万人)の撲滅活動として世界 に広がっている。学習の場の建設、教機教員活動支援等がそれ である。

また、人は誰でも自分の生まれ育った土地と風土と文化のな かで自己のアイデンティティを確立していく。 自国の文化と歴史を愛することは、他国の文化 と歴史を理解し尊重することに通ずる。「世界遺産」保全運動 にユネスコが熱心なのはこの為である。最近の文化財として 「紀伊山地の霊場と参詣道」の登録は記憶に新しい。

そして現在は環境問題として「持続可能な開発」教育に熱心 でありオリンピックのドーピングもユネスコ活動の一環である。

ところで、ユネスコ機関の前身である92年国際連盟本部の ジュネーブで発足した「国際知的協力委員会」(アインシュタイ ン・キュリー夫人、ベルグソン等がメンバー)の主導者が「新 渡戸稲作」(5000円札)であった。

日本は特別にユネスコと関係 が深い国と考えられている。

次号でユネスコ協同学校(ASPnet)を紹介したい。

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平成17年(2005)4月19日改訂