渋谷幕張中学・高等学校の二学期が終了する。
冬休み後、登校する時は二十一世紀も六年目となる。
世紀末の混迷と云われた時代から、いよいよ新しい世紀の課題が明瞭となってきたように思える。
昨年も、同じテーマで考えていたが、今年も全く同じで、このことにいよいよ自信を深めた。
即ち、「伝統文化の保護、継承、育成」の重要性についてである。
十月、日本政府代表顧問として、第三十三回ユネスコ総会・創立六十周年記念式典(パリ本部)に参加して、次の世代を荷う青少年に伝えるべき大変多くの発想を学んだが、その中でも最も重要、印象的だったのは「地球社会で各地に展開している多種多様な文化的アイデンティティを尊重する国際条約」を巡る各国の議論であった。
EU(ヨーロッパ連合)が提案し、私たち日本も賛同した条約案であったが、これに米国のブッシュ政権が、条約について政治的臭いを感じたのか、絶対反対の意志を表明し、「条約」は頓挫してしまった。
ユネスコに復帰したばかりの米国ではあっても、その影響力の強さに喫驚すると同時に、この問題の複雑さ重要さが浮かび上がってきたと思えた。
二十一世紀の世界の最大の未解決問題は、文化(宗教)的対立によるテロリズムの横行である。今や世界平和にとっての最大の課題の一つとなっている。
世界平和実現の為に人類が作った国際連合、その一機関としてのユネスコがこれに真正面から取り組む姿勢を示した。即ち「文化の多様性・アイデンティティの尊重・国際条約」がそれである。ユネスコは、既に、「世界遺産」或は「世界無形文化遺産」を指定して、これを大切に守り次の世代に伝える努力を行っている。我国の世界無形文化遺産は、先日「歌舞伎」が指定されたのはご存知の通りで、その前に「能」及び「人形浄瑠璃(文楽)」が指定されている。全世界では90余件指定されている。有名なユネスコ憲章前文「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」の実現の為にこうしたことが積み重ねられている。
三千年昔のギリシャの詩人ホメロスが詩で吟じている如く「人は未来に向かって後退りする。眼前にある過去をみつめながら。Back to the Future」。
従って未来への展望は、過去の検証によってのみ開けていくものなのだろう。
過去、世界各地に生まれ育った多様な文化のアイデンティティを尊重する、そしてこうした考えが世界中の人々の心の中に定着していくことこそが世界平和のはじまりの大切な礎となるのであろう。
ところで世界の中の日本文化のアイデンティティといえば、十八世紀の代表的学者「本居宣長」に触れる必要がある。世界最古の女性長篇小説「源氏物語」に「もののあわれ」を見出し、伝来の「古事記」を33年かけて解明し「日本人とは」に応えた学者。
次号で、解説したい。
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