えんじゅ:229号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXX)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


  三月、弥生。渋谷幕張中学高 校第二十五期生卒業。同窓会根 の下、二十一世紀に活躍する人 達が巣立つ。意気軒昂。  入試後 山のかくに渡えたり    高浜 虚子  二十一世紀、変 化多様化の時代。  この三月二日ユ ネスコ国内委員会 総会で多様性ダイ バーシティについ ての重要な決定が なされた。文科大 臣及び外務大臣に 当てて「文化的表 現の多様性の保護 及び促進に関する 条約」 (文化の多 様性に関する条 約) 加盟に向けた 早期の検討を求める建議書が採 択されたのである。国連の機関 の一つで、教育、科学、文化を 通じて各国民間の理解を深め、 世界平和に尽くすことを目的と する活動を行うユネスコは、創 設以来七つの文化に関する条約 を採択してきた。日本はこのう ち五つの条約を締結している。  万国著作権条約、武力紛争の 際の文化財の保護に関する条約 と二つの付属議定書、文化財 の不法な輸入、輸出及び所有権 譲渡の禁止及び防止の手段に関 する条約、世界の文化遺産及び 自然遺産の保護に関する条約、 無形文化遺産の保護に関する 条約。  どれも大変有名な条約である が、これが文化=人類の理想を 実現していく精神の活動。技術 を通して自然を人間の生活目的 に役立てて行く追程で形作られ た生活様式及びそれに関する表 現=の維持発展に大変寄与して きていることは明らかである。  文化活動には過去の人類の営 みの成果を保護し、それを学び 刺激を受け創作し、更にそれを 次の世代に伝えていくという視 点は欠くことが出来ない。  この点から、過去の有形、無 形の文化遺産を保存し活用して 次の世代に伝えることはまこと に重要なことになる。そしてこ の点については、日本が既に締 結した五条約の趣旨と全く合致 しているものと考える。 一方現代の創作活動が衰えれ ば、将来の文化に多大の影響を 及ぼすことになる為、現代の文 化振興を如何に図るかも、文化 政策の重要な課題となる。  文化の多様性ダイバーシティ を保護し促進することは、この 文化政策のキーワードとなると 考えるのが、採択を促したこの 「文化多様性条約」 の考え方で ある。  グローバル化が進み、又ユビ キタスが実現していくなかで、 強者のもつ文化が、弱者のそれ を席巻してしまうという懸念が 現実化しっつある今、自然にお ける生物の多様性の維持が重要 であるという考えと同様に、人 の営みには、文化の多様性が 重要であるという発想なのだ。 様々な文化が接触し、交わるこ とで新たな文化が生まれてくる のであるから、多様性が失われ ると、文化の縮小再生産に陥り かねないからである。条約締結 により100を超える国々とのネッ トワークに入って種々の国際協 力を展開することは、日本の文 化振興に新しい手法をもたらす であろう。現代既に加盟してい る中国、印度と共に協力して、 アジア太平洋洲の交流にも資し ていきたいものである。  自分のことは世界のこと。

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平成22年(2010)3月29日改訂