えんじゅ:239号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXXX)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 三月、弥生。幕張中学高校第二十六期生卒業。同窓会「槐」の下、二十一世紀に世界を舞台に活躍しようとする人達が巣立った。
 意気軒昂。
 
 大試験 山の如くに控えたり
                   高浜 虚子

 二十一世紀。国際化、多様化がいよいよ求められる時代となる。

 私達の国「日本」も、自分達の伝統や文化を大切に育て、一方、国際化多様化を意識することが、いよいよ緊急、最大の課題となっていることを考えてみたい。今あの「阪神・淡路大震災」(1995.1)の直後、「それでも私達は神戸に残ります。」と宣言して一躍有名になった「P&G (プロクターアンドギャンブル)社」が研究センターをシンガポールに移動させる決定をした。

 そのショックは日本に大きな波紋を呼ぶ。問題なのは移動の理由である。それは経済的なものだけでなく、むしろ、日本の社会が抱えている「国際化対応」にあると考えられるからだ。環境問題サステナビリティを会社の指針として活動する世界最大の消費財企業P&G社の決定であることは大変重い。

 移動に際して、P&G社は研究センターの子弟の教育について本校の関連校である早稲田・渋谷シンガポール校に相談に来られた。

 そこではっきりと判った。アジア地区の中心として、世界企業のP&G社が企画立案し、世界の求める商品開発する場所として、神戸よりシンガポールが相応しいと決断したのは、グローバルに開かれた発想をして、活動する人財を養成し、思考の発展を促す場としての力が日本から失われてきつつあるという現実判断である。つまり地域社会の全ゆる活動が「国際的に開かれたものであるかどうか」が問題になるのだ。例えば、安全、医療、保健から教育に至る迄国際基準との関連で開かれているかどうか等がまず問題となる。例えば、日本でなかなか動かない「病院の国際認証問題=Joint Commission lnternational」、教育分野での「幼稚園から大学・大学院迄の教育成果の国際比較問題」があげられる。

これ等は、努力していることは確かだがどうにも改革へのスピードが遅い。医療で「東京でさえも、国際基準を満たす病院がない」といった医療水準を誤解させる言動は早くなくしたい。

 又教育については、明治維新期に造り上げた「欧米先進国に追いつく為の集団一斉教育」 の色彩からなかなか抜け出せない。集団 から一人一人の教育に重点を移す為には「減点主義から加点主義へ」「言語の多様性を早くから認識させる為にも、国語教育から日本語教育へ」「教育成果の国際比較が容易に出来るよう国内規制の緩和」など早急に検討されねばならない。日本という社会から「グローバルな視野を持ち、グローバルに活躍する人材」は育ってこないという偏見(実は正しい見方かもしれない)をなくしたい。

 私はユネスコの関係者から良く質問される。「日本は150年前(明治維新期) どうやって自らの伝統文化(アイデンティティ)を守りつつ外国文化を導入したのか」と。私達の先輩はこうした難問に立ち向かった。これから私達の番だ。自調自考生、どう考える。

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平成23年(2011)4月13日改訂