えんじゅ:239号


第二十六期生卒業証書授与式




 空が目を閉じたまま、落涙を堪えているような曇り空。湿り気を帯びた空気に「春」気配が漂う。
 前日から準備の整った田村記念講堂は、舞台正面に大日章旗、右に華やかに色とりどり活けられた大きな、生花。正面左には松と校族が正常に配置され厳粛な空気が張り詰める。
 「一同、ご起立ください!」の声で一斉に、しわぶきが止む。聖なる空気が講堂を支配する。
 エルガーの「威風堂々」で入場した卒業生の貌が卒業の日の想いを目に溜めて、暗い客席を宝石箱にする。
 二六回目の卒業式が始まった354名の呼名を高橋主任が確認し、校長が卒業を認証し、授与が滞りなく行われた。
 続いて校長が式辞において、課程を修了することの努力を称え、卒業を祝するとともに、本校の卒業生であることに自信を持って人生を進むよう激励する。
 来賓祝辞では、キッコーマン株式会社特別顧問・上花輪歴史館理事・館長、高梨兵左衛門様より保護者への祝辞を、卒業生へは広く世の中で活躍する有為の人となるよう激励と餞の言葉を戴いた。
 送辞は在校生を代表して生徒会長の松浦さんが行った。
 ドライで稟とした声調で始まった送辞も半ばで微かな変調をたどり聞く者に卒業生への想いを起伏させた後で、最近の近東諸国のムーブメントに及び先輩達の進む世界への希望を述べた。
 答辞では、山下君が穏やかで感性豊かな人間件溢れる辞で謝し、鵜沢さんが英語で、気配りに満ちた感謝の言菓を述べた。二人の答辞は三年または六年間の学園生活への素直な感謝でありながら、送る側・教員への真肇な三省を、期せずして迫るという内容で、知的生活の奥深さを再確認させられた。
 そして式歌。
 「仰げば尊し」が始まる。
 臨席する総ての人に、訣れの時が追って来る。一番、二番と歌詞が進み、唄う者の咽を締め付けるような気配が立ち上ってくる。と、女子生徒の膝あたりを落涙の流星が過ぎる!
 式歌は校歌へと移り、訣れの哀しみが最高潮へ達し、閉式の言葉が念を結ぶ。
 A組の退場曲、シユーマン 「トロイメライ」が高木君の演奏で始まり、卒業生の退場が始まる。
 卒業生の背中を見送る教職員の心にひとつの言葉が浮かぶ。
 一路 平安!
 









医薬系ガイダンス



 本校卒業生を招き、医薬系を目指す高校一・二年生の希望者を対象に催す恒例行事である。
 東京医科歯科大学医学部医学科三年生の吉田さんは、「医学部生は美大生並みにスケッチをする」などの裏話を紹介して巧みに場を盛り上げる一方で、「本当に医学部でいいのか、もう一度よく考えて欲しい」と慎重な進路選択の必要性を投げかけた。また、「なぜを大切に出来ない人は、患者に向き合う資格がないと思う」という自身の覚悟を含めた言葉に、はっとさせられた生徒も多かったのではないか。
 京都大学薬学部薬科学科四年生の目堅さんは、自身の体験を元に、部活動や勉強、恋愛など、一つ一つに集中し、全てを全力でやりきる大切さについて熱く語ってくれた。また、大学での実習授業で、使えなくなつた実験動物たちが目の前で命を絶たれる実情に触れ、「命を扱うという覚悟を持って欲しい」という訴えかけに、教室の空気が引き締まった。
 東北大学付属病院に勤務する木田さんは、医者になるまでの道筋や医者としての仕事の内容を分かりやすく話してくれた。実際の内視鏡手術の様子を写した動画に、呼吸を忘れて引きつけられる場面も有れば、何の前触れもなくマンガ 『スラムダンク』 の一コマが画面に現れて、教室が笑いの渦に包まれる場面もあった。充実した内容は勿論のこと、見ているものを飽きさせず、巻き込んでいくプレゼンテーションに、一同感心した。医者の、研究者としての側面を垣間見たと同時に、診療という場面においても、患者の側に立ち、和やかな雰囲気の中で患者との信頼関係を育んでいく上で必要な資質と感じた。
 かくして渋幕の白熱教室は、大成功であった。

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平成23年(2011)4月13日改訂