えんじゅ:244号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXXXX)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 「槐祭」が終了し、校内の熱気と集中が収まり、一転静かな学校生活に戻る。(出来の良かった歓迎門などが例年のように残され生徒諸君が鑑賞する)
 来校見学される方の数は総計一万人を越す大変な数で、例年にもました賑わいであった。槐祭の今年のテーマは「革命」。展示もパフォーマンスも素晴らしいものがあった。又今回はじめて入口で来校者全員に、地震発生時の注意書き(日英語) が配付され、「東日本大震災3/11」 の年の学園祭という印象を強くした。この危機管理形式は今後通常のこととなるのであろう。
 学園祭の風景の中で、私はリチャード・ドーキンス (進化生物学者・英) の提唱したミーム=文化遺伝子meme=が、渋幕学校文化を背負って、しつかり次代に引き継がれていることを実感した。
 この「伝統」を感じると同時に、今回は「変化」をも感じとることがあった。
 祭りの派手さの中に、人の心に染み入るような落ち着きと地味さを感じとることがあった。
 大きな事件があると、人々の心はそれによって変化するという。今回感じた変化はこれが原因なのか。
 フィレンツェの商人ジョコンダの夫人の絵が天才レオナルド・ダヴインチによって世に出された時(1506)、当時の西欧の人々の人間観が変わったといわれている。優れた絵の持つ力。後世この絵は「モナ・リザ」と言われている。又1755年新大陸の植民地経営で空前の繁栄を誇ったポルトガルの首都リスボンを襲った巨大な地震と津波。25万人と言われた住民は半減した悲惨な大事件。この事件後西欧の人々の「神」に対する意識が大きく揺れ動いたと言う。ライプニッツ(独) の思想(「弁神論」等) やヴォルテール(仏) の著作「カンディード」等には当時の知識人達の「人間の世界に起こる事件の善悪と善なる神との関係」を考え論じた流れが克明に残されている。
 私もこの夏、東日本大震災の影響で、聖書を読み返してみた。私はキリスト教徒ではないが、旧約聖書の「ヨブ記」にはこの問題が真正面から取り上げられている。善なる神と人間の受けた大災害の関係を考える形而上学的、宗教的問は今は、各人にまかせよう。因に東日本大震災につい て日本人の少女が現ローマ法王に「なぜこんな悲しいことが起こるのですか」と質問したことが新聞で報ぜられたが、法王の答えは「分かりません」であった。この答えは私も正直で非常に良いと思う。
 然し、私達は、自然災害の原因は知っている。地球(宇宙) の出来事が物理法則に従って運動変化することが大災害の直接の原因である。これは人間にはどうすることも出来ない。然しこれが大災害になるかどうかは人間の対処にかかっている。これを一言で言えば、人は第一に人々の問に助け合いのつながり(ボランティア与贈循環)をつくる生き方をし、自然との調和的関係を創り緋続する生き方をするということであろう。この考え方、心の持ちかたについて次回につなげる。(続)


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平成23年(2011)10月11日改訂