えんじゅ:245号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXXXY)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 秋たけなわ、霜月。長かった酷暑から解放された収穫を祝う月。
 欧米諸国、特に米国では十月末の「ハロウィーン」でこども達が「Trick or treat」と菓子をねだり、第四木曜日の「収穫感謝祭Thanksgiving Day」を祝う。
 日本では「秋祭り」。収穫を祝い、冬を迎える活力を吹き込む神事が催される。
 学園では、この時期、「心」のバランスを取り戻す重要な行事として「校外研修」が行われている。人間の精神作用のもとになる知識・感情・意志等を私達は「心」と呼ぶが今日その形 成過程の殆どが「言葉」によってなされてきている。特に近年人間は際立って高い脳の言語情報処理能力を利用してその文明文化を高度化している。そして、高度な情報処理装置と記憶装置を地球規模でネットワーク化して人間のその面の能力を強化補強している。このことについては、つとにその弊害=インターネットを見るだけで全て判ったつもりになってしまうといったこと等=が指摘されている。
 人の心は、知覚、情動、動機付けおよび言語からなるという。知覚は生物的、情動はヒト的側面が強く、動機付けは人間的およびヒト的要素を共に含むという。狩猟採集時代の人間は互恵利他的な動機付けを現代人より強く有していたらしいと推測されている。そして現代人の心(行動)は、言語情報(脳)に強く影響されている結果、心の四要素、心と身体、人間とヒトさらには個人と社会(コミュニティー)のバランスを崩してしまって正しい心の働きが出来にくくなっている。
 このバランスを取り戻す役割のある重要な部分を学校での校外行事は担っていると考えている。
 中一・房総、中二・長浜、中三・奈良、高一・広島、そして高二・中国北京西安での校外研修は全て現物を見、確認して自分の頭で考えるという行為を実行し、知覚、情動、動機付け、言葉の四要素をバランス良く働かせて正しい心の働かせ方を身につけることが出来るようにする行事である。
 そこで、前回触れた「大震災に遭遇した人としての心の持ち方」について触れてみたい。歴史に残る大震災は人々の心を大きく変える(歴史的事実)。リスボン地震は世界規模で初の救援活動を生み出し、日本の阪神大震災は青少年のボランティア活動の活性化を生み出した。今回の東日本でも、「タイガーマスク事件等数多くの与贈的行為が頻発し」人々の心が変わろうとしていることが示されている。
 今回の大震災は、地球内部の灼熱のマグマの運動によりおきた私達人間の力では避けることの出来ない必然的事件である。となると、問題は自然の猛威に対して偶然それに遭遇した人間がどう対処するかといういわば人間の心の働かせ方を考える以外災害を災害とさせない方法はなさそうである。一言で言えば、人間が人間愛に基づく自律的な力を結集し、人間らしい世界を建設し、苦しみから善なる結果を生み出すということになろうか。自然に従った、人間に相応ふさわしい生への努力が求められよう。ここで人の「心」のバランスの必要性が出て来ると考えている。最後に今回確認したい重要な次の三点をここで指摘したい。@科学技術力の過信の戒め、A人間の生の本来の意味は、人が人を愛し愛される助け助けられること。生きるとは人が愛の交わりの中に入ること。Bこの生き方が全世界規模に広げる広がるということ。(了)


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平成23年(2011)11月28日改訂