えんじゅ:246号


2011年度
進路講演会
11/25








 11月25日に京都大学霊長類研究所所長である松沢哲郎先生をお招きし、進路講演会を開催しました。対象は、中学3年生および高校1年生・2年生でしたが、保護者の皆様も多数ご来校いただきました。
 講演では、まず「先進国でサルが住んでいるのは日本だけである」という意外な事実から話し始められ、猿(monkey)と類人猿(ape)の違いなど、講演の軸となるチンパンジーに関する基本的な事柄についてお話になりました。ヒト科はオランウータン属、ゴリラ属、チンパンジー属およびヒト属に分けられることから、先生は常にチンパンジーを数えるときには「何人」という数え方をなさり、チンパンジーを研究対象というよりも仲間として扱っていらっしゃるという印象を与えてくださいました。
 次に、チンパンジーに対するいろいろなテストの映像を見せ、チンパンジーも学習して文字や色、数字の順番を学習することができることを見せてくださいました。さらにチンパンジーの子供は、人間の大人よりも優れた記憶をもち、彼らは人間の子供の何人かがもっていると言われる直感像記憶に優れていることをお示しになりました。このことから、チンパンジーは「今そこにあるものを見る」のに対し、ヒトは「今そこにないことを考える」と結論付け、何かを失わないと新しいものは得られないと述べられました。つまり、人間が人間である大きな理由の一つとして、「考える(想像する)力」を得たことが挙げられるということです。
 最後にチンパンジーの現状についてお話になり、森林の伐採や伝染病、食用として狩られていることなどから現在のチンパンジーは危機にさらされていることを述べられ、絶滅危惧種に指定されていること、また、チンパンジーの生息場所によっては群れの個体数が少なく、血が濃くなりすぎていることなどをお話になり、我々ヒトが仲間であるチンパンジーを救うことの重要性をお話くださいました。先生が今行っている、「緑の回廊プロジェクト」についてもお話になられ、先生の書かれた「想像するちから―チンパンジーが教えてくれた人間の心」(岩波書店)の印税はすべてこのプロジェクトに寄付され、資金になっているそうです。
 生徒たちの質問にも多くの時間を割いてお答えくださいました。その中でも、自分の研究に対する誇りや研究者としての姿勢を織り交ぜてお話くださいました。そして、自らチンパンジーの鳴き声の真似をなさり、生徒の興味を引いた上で、「もし、もう一度人生をやり直すのなら、チンパンジーになってチンパンジーを研究したい」とおっしゃられました。
 「人間とは何か」それをずっと考えて研究を続けてこられた先生のお考えを、熱く生徒たちへ語りかけて講演会を閉じました。


 

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平成23年(2011)12月24日改訂