えんじゅ:248号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXXX\)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 三月、弥生。渋谷幕張中学高校第27期生卒業。同窓会槐の下、21世紀真っ只中で活躍する人達が巣立っていく。意気軒昂。
 大試験 山の如くに控えたり
高浜 虚子
 21世紀、変化の激しい、多様性の時代。この時代を生きる知慧を求めて2月6・7日と2日間「世界文明フォーラム2012」が東京で開催された。
 テーマは「公正」の実現である。
 つまり正義・justiceの実現について考えるが課題で、その為「価値観や技術が急激に変化する21世紀では、公正の実現には、現世代における公正と共に世代間の公正にも十分配慮することが重要な責務」であるとした上で、3つのセッションに分け議論を展開した。第1セッションでは「21世紀文明への震災からの教訓」が議論され、第2では「世界の経済、環境面での諸課題への対応」、そして第3では「芸術文化の果たす役割」がテーマとなった。議論の結果、「このたびの大震災の教訓も踏まえつつ、21世紀に我々はどのような地球環境と経済社会の姿を目指すべきか」「それに必要な人間力を養成する上で、文化芸術はいかなる役割を果たしうるか」が浮かび上がって来た。こうした公正議論を通して、私は世界におけるミニマム(ゆるやかな)コンセンサスとして共有出来るものは何かを明らかにすることが出来ると考えた。そしてこの議論の延長線上に、現代社会の最大の課題である先行きの不透明さに対する解決の道を見つけ出す方策が存在していると考えた。
 つまり青少年にとっての現代社会の最大の課題である「未来の不透明さ」その結果もたらされる重い「閉塞感」「現状肯定と未来への不安」といった問題に対する解決のヒントが得られると考えるからである。
 この考えは、このフォーラムの基調講演者であるアマルティア・セン・ハーバード大学教授(インド)の講演を拝聴しながらはっきりと実感したものである。
 セン教授は、経済の分配・公正と貧困の研究で厚生経済学を発展させた功績によって1998年にノーベル経済学賞を授与されている。
 教授は講演で21世紀という時代を考えるには次の3つのフェーズが必要と述べる。第1は知識と理解の重要性について。国連の「人間開発指数」策定にかかわった経験から、自然災害、テロ人災を含めた「核脅威イニシアティブ」「総合核物質指数」の提案の下で「不確実と共に世界は生きていかねばならない」という認識の徹底が必要。その上での知識を深化する。そして「自然は熊手で放っておいて必ず戻ってくる」(ホラティウス)ものでなく戻ってこないものとなった危険に対し、第2フェーズとしてグローバル倫理の視線が一層重要となる。所謂グリーンイノベーション≠フ必要性と実現。
 そして第3フェーズとしての世界文明の統一性の実現。地球上の多様な文化、文明の共存と相互主義へ向かって互いを認めあうことのいよいよの重要性。(包摂的関係と分断的関係)例えば福島の事故は世界の事故でもある。
 最後に21世紀はとても難しい時代であるが、互いが確実にしっかり公正≠求めることで道が開けていく時代であると私は考えた。
 卒業生のいよいよの活躍を期待する。



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平成24年(2012)3月10日改訂