えんじゅ:255号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCXXXXY)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


  秋たけなわ、霜月。長く続いた酷暑から解放されて収穫を祝う月。
 北半球、欧米では、特に米国の第4木曜日「収穫感謝祭」Thanks giving Dayの祝いが有名で、又キリスト教国のハロウィーンの行事「子供達のTrick or Treatと菓子をねだる祭り」がある。
 日本では「秋祭り」が楽しい。稲の収穫後に、新穀を供え神に感謝し、今迄田にあって守護してくれた神が、山に帰られるのを送る祭り。夏祭りがみそぎはらいの行事から出発しているのと趣を異にし、農村が中心の祭り。
 垣を刈り辻の草刈る秋祭
水原 秋櫻子
 学園ではこの時期重要な行事として「校外研修」が行われる。秋祭りは人間の互恵利他的な動機付けからはぐくまれたものであるが、本校の秋の行事「校外研修」は、集団で共通の目標=私達の文化の源泉を探り、実体験する=の下に行動することで、とかく不安定になりがちな「心」の健全なバランスを取り戻す役割が期待されている。校外研修は学園の秋祭りとも云える。
 中1房総、中2信州、中3奈良、高1広島そして高2中国北京西安、ここで現場での風土、人間との交流を通して、自分の頭で考え行動する結果を楽しみに行事が行なわれる予定であった。処が今年は残念なことに「国際情勢」が原因で行事が不可能となる大変な出来事がおきた。
 高2の中国行事の中核は中国の高校生11校との交流で作られていたが、全ての高校から、今年は「交流を遠慮したい」と同趣旨の連絡が入ってきた。
 国際交流には前向きだが今年は「国際情況」が理由で中止やむなしとの判断を伝えてきた。生徒諸君達にとっては、おそらく国際情況が直接的に自分達に大きな影響を及ぼした最初の経験になったのではないかと思われる。(高2は代りに九州に行くことが出来たが)
 考えてみれば、2000年代に入って、私達は世界の転変に次第に敏感になってきている。
 対立はあったが、それなりに安定していた冷戦構造が終焉(92年から)すると、世界規模でのグローバル市場経済が拡大し、アメリカの覇権と云われるなかで、全く異なる世界の極、中国やインドが出て来、「9・11」事件(2001年)でイスラム世界との対立抗争が現実のものとなり、世界中全ての事象が直接的に私達の世界に影響を及ぼすようになっている。
 故に私達は、世界の軍事費が冷戦終結時1兆ドルだったのが、今1兆6千億ドルを越えていること、又92年リオデジャネイロ宣言で地球規模の環境案件が提案されたが、今年のリオ+20の会議ではほとんど進展がみられる成果が得られなかったことなどを知らねばならない。国連が中心になって提言してきた「環境適正」と「社会的公正(格差是正)」を持続可能とする世紀目標は今危殆に瀕している。
 若者はすべからく、明確な視野を持った地球市民社会の一員となるべく歴史を正しく学んで将来にそなえてほしい。
 参考文献
   モンゴル:杉山正明「遊牧民から見た世界史」日経ビジネス人文庫
   イスラム研究:羽田正「新しい世界史へ」岩波新書
   「もういちど読む山川世界史」山川出版社



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平成24年(2012)11月16日改訂