えんじゅ:267号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCLVIII)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫

 

    二千拾四年、平成二十六年、甲午の年を迎える。
   甲は木の兄の意。十干の一位。四季は春、方位東北東。五行の木(紀元前十七世紀頃の中国に起源する哲理、陰陽五行説)。午は十二支の七番目。月では七月、動物では馬が充てられる。
   人類の文化と馬の関係は紀元前四千年代から始まると云われている。紀元前二千年代の前半にオリエントを中心とする古代文明の地帯に突如騎馬民族が出現し人類の大移動があったことが記録されるが、この馬と戦車の出現は以降の人類の歴史上での大きな出来事である。また、中国でも紀元前二千年代後半の安陽の殷墟に発達した戦車と多数の馬の骨が発見されている。
   その後この戦車は騎兵にとって代わられているが、農耕民・遊牧民共にその信仰に数多くの馬が登場するほど馬は人類の生活と密接な存在となっている。ギリシャの海洋神〈雄牛なる〉ポセイドンは、馬が犠牲にささげられた馬神であり、東洋でも雷雨神伝説が竜馬伝承・天馬伝承となっている。
   中国では馬をその歳により、二歳を駒、三歳を騑、四歳をトウ、八歳をハツと呼ぶほどに人と馬との関わりは深い。
   今年も「天馬空を行く」如く大きくめでたい年になってほしいものである。
     何となく今年はよい事あるごとし 元旦の朝晴れて風なし
       石川啄木
   希望を込めて、新しい年を。
   雪下 麦を出だす。
   さて、現代の世界は着実に国境を超えた繋がりを強化させている。単なる経済のグローバル化というだけでなく、社会、文化の面でも全く同じで、人々の出会い、交流、共生が世界単位で盛んに行われている現在、一国中心で国単位に考えることだけでは、現代人類社会の抱える問題は解決出来なくなっている。たしかに現実に国が存在する以上、領土、主権などの概念は消えることはないであろうし、外交や国防などは依然として国の基本だと認識され続けるであろう。しかしそれだけで終わってしまっては、二十一世紀の新しい人類社会の展望は開けない。
   今年、ユネスコ世界大会が「ESD(Education for Sustainable Development)」をテーマとして、日本で開催される。このような活動が二十一世紀人類社会の展望を開く大いなるヒントになると考えている。ここでのテーマは、現代人類社会のかかえている難問の数々(環境教育、エネルギー教育、生物多様性教育、気候変動・国際理解・世界遺産・地域の文化財等に関する教育など)である。
   二〇〇八年、環境を主要議題とした北海道洞爺湖サミットを開催した日本では、環境教育はCO2削減を中心とした検討課題と考えがちだが、実はここで示したようにESDは、「関連する様々な教育を持続可能な社会の構築の観点から繋げ総合的に取り組む」教育のことである。
   そしてこの意識を国単位で呼びかけるだけでなく、その背景を成し、今や大変強力な存在になりつつある市民間の連結(具体的にはNPO活動、企業間連携、ユース活動連結等々によって)に向けて強化しようとするものだ。更には幼時から諸国の人達との繋がりを尊重して考える習慣を身に着けさせることが大切であろう。ここから世界に通用するグローバル人材が生まれて来ると考えている。
   世界の多様な文化をAuthenticity(真正性)の切り口で考えることも重要なものとなってくる。
   自調自考生、どう考える。


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平成26年(2014)1月9日改訂