えんじゅ:283号  


SGH特集

 

コラム SGH ⑧


 ギリシャで国民投票が実施され、EUが求めている緊縮策には現時点で反対することが決まった。韓国が反対していた「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録は、両国の協議を経て、登録されることが決まった。こと国際社会において決まる事柄は、予想通りに進むとは限らないことを実感する。それぞれの立場を越えて合意していくためには、関係者間の相当な努力、事前の協議や綿密な調査など、色々な事が背景で行われているはずである。  主体的に生きるとは何か。事柄を傍観するのでなく、考え行動することである。もちろんいきなり大舞台での活躍が用意される訳もなく、目指す舞台への道は、いつも小さな一歩からスタートする。順調な道が続くとは限らないし、場合によっては戻らねばならないときもあるかもしれない。予想通りには進まないものではあるが、もしかしたら、スーパーグローバルハイスクールでの取り組みの一つが、グローバル社会での活躍の一歩となるかもしれないのである。
 

高一歌舞伎鑑賞教室


  六月六日、晴天に恵まれ、多くの学校の生徒たちが国立劇場に集まった。恒例の歌舞伎鑑賞教室の今年の演目は、『壺坂霊験記』。壷阪寺の観世音の霊験を題材に採った、夫婦の情愛を描いた感動と奇跡のドラマで、生徒たちにも理解しやすい内容だった。迫力ある演技と、歌舞伎独特の音楽や義太夫節に、生徒たちもすっかり引き込まれた。解説「歌舞伎の見方」では、女形に変身してゆく化粧の実況が見られた。また本校生徒二名が壇上に上がり、実際に女形のポーズを習い、花道を歩くという貴重な体験もできた。
 

高二オペラ鑑賞教室


   緑の匂いと湿気の混じった七月十一日に、初台駅前にある新国立劇場において毎年恒例となっているオペラ鑑賞教室が開催され、今年も高校第二学年が参加した。このホールは日本が世界に誇る本格的なオペラハウスであり、優れた音響設計はもちろん、オーケストラピットや舞台装置等、一流の空間を味わう事ができる。また、出演者は本公演と同じであり、生徒にとっては正に本物に触れる好機である。  演目はイタリアオペラの巨匠、プッチーニの作曲した「蝶々夫人」。流れるような旋律と印象派的な和声の組み合わせに乗る物語の舞台は約一〇〇年前の日本の長崎であり、当時流行したジャポニズム(日本趣味)の影響を色濃く受けている。作曲者の書いた一〇〇年以上も前の総譜から現代の演奏者が音楽を呼び起こし、聴衆をタイムトラベルへ誘う。曲中に流れるなじみ深い日本の旋律を探したり、海外の目に映った当時の日本の姿を観察する等、楽しみ方は様々だが、蝶々さんの悲劇的な運命に涙した生徒もいたようだ。