「槐祭」が終了。熱気と集中が収まり、校内は一転静かな学校生活に戻る。一学期のスポーツフェスティバルと対の学園文化のお祭りという最大の行事が終了した。
今年のテーマは「心オドル、ハズム、ウゴク」。
九月、長月、白露鶺鴒鳴く次候(七十二候)のこの時期に行われた行事に、史上最高「一万三千三百余」の方々が来校。
福祉目的のバザー、古本市をはじめとする校内売り上げ高も史上最高となった。
時代を覆う重苦しい閉塞感を若者達がどう受け止め、どのように「突き抜け感」を演出したか。どのように「青春」を感じているか。彼らの「創造的表現学習共同活動」はまことに多才、多能。パフォーマンス満載。
彼等彼女等の云うとおり、思い切り楽しみ(オドル)、次への期待を膨らませ(ハズム)、そして(大きな)感動を覚えて(ウゴク)いただけただろうか。
時代は今、英 歴史学者ボブズボームが指摘する「人類史上最大の断絶点に近づきつつあるので、人類は新しい存在に進化するのか夜来たる存在になるのかの分け目に立っている」を考えると、若者達がどのように「次の時代が求めている思想を手に入れているか」を示せたのかが一番気になるところである。今年も渋幕の文化遺伝子ミーム(英 進化生物学者R・ドーキンス)の輝ける一頁になったか。
今回祭りの最中、ヨーロッパTVの取材があり十月に欧州で放映される予定。
そして学園は清秋を迎える。
時の花いやめづらしもかくしこそ
見し明めめ秋立つごとに
万葉集 四四八五 大伴宿禰家持
次々と秋の七草が咲き誇る。
萩、薄、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗。
ところで、時代の断絶点という表現を使ったが、これを表徴するような出来事が日本で起きた。
六月、文部科学大臣通達で「大学の人文、社会科学系の学部、大学院に関する組織の見直しを指示したこと」が大きな波紋を呼んだ。
文系学問の切り捨てであるとして多くの大学教員からそして最終的に日本学術会議からも批判が発せられた。
日本学術会議は人文、社会科学をHumanities and Social Sciences と訳している。Humanitiesは「人文」と訳されるが、この言葉は中国『易経』に由来するもので「人々が一定の秩序に則って生活しているようす」を意味する。
同時に『易経』に「人文を観て、以って天下を化成す」と記述してあることからもわかるように、すぐれた君主が「人文」を見て民に教化するという意味も含まれている。
つまり、「人文」には優れて精神性、道徳性が内在している。
ラテン語humanitasに由来するhumanitiesも同様に、一定の法則性を追求する科学とは別に、「文化」を学ぶことで人間性を豊かに養う教科として重視され「実学」「社会科学」とは別に「人文学」は大学教育の理念として中心的な位置を占めてきた。
大学を意味するウニウェルシタスという言葉は元来組合やギルドを意味し、大学は「教師と学生の組合」であるという定義は今日でも大学最良の定義とされている(米 歴史家チャールズ・H・ハスキンズ 『十二世紀ルネサンス』)。伊 サレルノ大学(医)、ボローニャ大学(法)、パリ大学(文・神学)の十二世紀からの歴史的経緯はこの定義を正しいものと証明している。
ところが、今日では大学の中心テーマの一つ「研究」も第四世代に入っていると云われてきた。(スティーブ・スミス/英 エクセター大)個人研究から大学、そして国家レベルへと発展してきた研究はグローバルな世界を舞台としてのものとなってきている。
新しい時代の新しい大学はどう発展するのか興味深く見守りたい。
自調自考生 どう考える。