平成二十八年六月。水無月。芒種末候。梅子黄なり。
雨の季節である。「梅雨」と呼ばれる雨が降る。「梅雨」は「ばいう」「つゆ」の二つの読み方がある。この頃梅の実が熟すと同時に、新緑もほゞ出揃い、雨に光る美しい緑が映える。
我国ではこれを「青葉」と云う。
「山青花欲然」山青くして花然えんと欲す。(杜甫、絶句より)
そしてこの「青」は「翠」とも書かれ、黄緑色の新緑に梅雨の一滴一滴が当たると、まるで翡翠のような美しい光る色が現れる。この雨を「翠雨」という。そしてこの時期に「翡翠」がその美しい羽根の姿を現す。
青柳 梅との花を 折りかざし
飲みての後は 散りぬともよし
(万葉集巻五 笠沙弥)
万葉集で詠われた植物は、約百四十首の「萩」、「梅」が約百首。「桜」は約三十首である。
又日本各地では田の神に豊作を祈る祭が行われる。伊勢の伊雑宮、磯部の御神田や大阪住吉大社の御田植(八乙女の田舞)等が有名。関東では鹿島神宮や香取神宮の田植えが古くから伝わる。
私達の国の古歌を編じた万葉集には、こうした日本の風土を実感したものが「精神的風土」として歌い上げられている。「詩はこのように人々の記憶の庭に育ったことばを摘んで、かたちにとらわれずに、ただ忘れたくないことだけを誌したものだ。」(長田弘詩集『記憶のつくり方』)こうして詩を読むことで、私達は記憶によって明るくされ、活かされて来る。
この時期、学校では一学期のいくつもの行事を仕上げている。スポーツ・フェスティバル、中一野田上花輪研修、中二鎌倉研修等これ等行事全ては生徒諸君が中心となって完成させる。達成感は強く、自己肯定感を育んでくれている。更には「科学の甲子園」等といった全国的行事に参加し、その力を表わす時期でもある。
ところで、今年は四十二回目の主要七か国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が五月二十六・二十七日に開かれ、日本は六回目の議長国であった。出席者はG7各国首脳と欧州連合の代表者である。
外務省による公式発表では「世界経済・貿易」「政治外交問題」「気象変動・エネルギー」「開発」、「質の高いインフラ投資」「保健(感染症対策エボラ出血熱、ジカ熱)」「女性」をテーマとして、日本各地でなされた各国担当大臣による議論はこの二日間でまとめられた。また今回はオバマ大統領(米)が「原爆被災地・広島」を米国大統領として初めて訪問したことは、世界中の注目を集めた。
ウクライナ危機発生以降ロシアを除いて開かれている現在のG7の役割は、毎年の会合の度に「当該先進国」がそれぞれの国の法の支配の下、民主主義政体の健全性のチェックと、それぞれの国での市場経済自由主義経済の正常健全性を確かめる機会として機能しているように見える。地球社会での民主主義体制の優位性と市場経済の正当性を確立させた二十世紀が二十一世紀になると、「格差」問題、「地域統合」問題そして「力による現状変更」問題といった変数要因によって不安定化してきた。G7はそれに対しての安定化策としての有力な機会になりつつあるように思える。列強に互し不羈独立を目指した日本、明治維新を経験した日本には既視感のある風景である。
日本では民主主義政体の正当化をたしかめる投票が七月十日参院選挙にある。世界の90%が実行している十八才投票権の最初の実行になる。世界には二〇〇七年から十六才投票を実施している国オーストリアもある。
政治参加、自調自考生、どう考える。