えんじゅ:125号

開校記念講演会

朝日新聞社社主 上野尚一氏講演


「愛と友情と感動と」

 ……そう題された講演は、約二時間にわたり、氏の出会われたかけがえのない人々の、汲めども尽きぬエピソードで溢れ統けた。それらのエピソードを通じて語られる、人間に村する「愛情」と「友情」と、そして、そこにあるかけがえのない「感動」、、それ等をたばねるキーワードは「尊敬」であったと思う。

 小学校五年生の時、病床にある鎌倉のおじい様に手を暖かく握られて「いい後継になれよ」と言われ、家代々の「新聞屋」になろうと思ったことコそれがおじい様の最後の言葉であった と後に知ったこと……。

 フランスにいらっしゃったころのご友人で、後に、「奇跡の水」の不思議な縁で氏の最初のおアさんの代父一ゴッドファザー一になってくれたジャン・バチストさんのこと……、、

 イギリスのイートン校出身で、現在上海で活躍する語学の才豊かなルパートくん。その少年時代の日本留学と日本の学生との友情のこと…−、

 バイオリン製作の本揚クレモナで活躍し、死後は冷凍保存してもらって自分の作品の三片年後の音を聞いてみたいという夢を持つ、こだわりのヴアイオリン職人、石井さんのこと……。

 どのエピソードにも、氏とそれらの人々が互いに人間として尊敬しあうことでその存在をかけがえのないものと感じ、出会い得たことを感謝する気持ちが感じられた。そして、そのような気持ちの大切さを若者たちに伝えたいという氏の思いが込められていた。

 氏のおっしゃるところの「尊敬」は、英語で言えば。EGAPEMOHでしいのかもしれないが、筆者には別に思い当たる言葉がある。かつてホームステイの生徒の引戎−者としてオレゴンで自分もホームステイ生活をした。その帰国の前円に、別れがたい思いでホストファザーと伎更けまで諦り合った。そのときの「亙いに。ξ肩gζ8。すること、それが一番人切なことじゃないかね、おまえは私たちにとってスペシャルなんだよ、」という大変美しい言葉が胸中に浮かんだのである

 講演は、ご長男を亡くされた氏の願いとして、なによりも、白分のことを愛している人々のことを思い、その人々のためにながく生き続けてほしいというメッセージで締めくくられた。


校長先生講話:「自調自考を考える」(そのCXX)
平成十年度第十四回卒業式(3/2)
開校記念講演会:上野尚一氏講演(2/25)
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平成11年(1999)3月20日改訂。