えんじゅ:133号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCXXXT)


幕張高等学校・附属中学校校長

田 村 哲 夫

 二月、光の春のとき、渋谷幕張中学・高校の新しい「自調自考生」を 目指す新入生達が決定した。

 そして三月、弥生、草木のいよいよ生い茂る月「いやおひづき」に、 自調自考の体現者である15期生を世に送り出す。

 冬薔薇の長き愁眉を開きけり       有馬朗人

  多くの植物は、日平均気温が5度以上になると発芽したり、伸び始め たりする。この5度以上になる期間を、植物学上で「植物期間」と呼ぶ が、関東地方ではそれが三月弥生に始まる。この月は、私達の生活のな かにも新しい芽が出る時期といえよう。

 そして、今年は二十世紀最後の年であると共にミレニアム(千年期) と云われる西暦1000年代から2000年代に変わった最初の年でも ある。

 2000年代最初の入学生を迎え、そして卒業生を送る。ここで来た るべき21世紀と人類社会のこれからを考えてみたい。

 私たち人類・ホモサピエンスがこの地球にはじめて登場したのは、今 から400万年も昔のことと云われている。しかしその長い歴史の99 %以上は狩猟時代で、人口はほとんどゼロ成長で、最近の1%足らず、 紀元前5000年ごろの新石器時代から最初の産業革命とも云うべき農 業の始まりによって、人口は指数関数的にぐんぐん増加し、さらに18 世紀の産業革命による工業の発達は、都市人口の急増をもたらした。 20世紀はじめに15億人を突破した人口は今世紀中に62億人を越し て21世紀を迎えることになる。この爆発的な人口の増加は、有限の宇 宙船地球号にさまざまなひずみを引き起こしている。「南北問題」「環 境汚染」「資源枯渇」「自然破壊」等々。研究によれば、ヒトが登場す る以前では、地球上での動物絶滅種の数は50年間に一種類ぐらいであ ったのが、最近の50年間では少なくとも35種の野生動物の絶滅が数 えられている。この絶滅種の数はこれまでの人口増加の割合とほぼ比例 しているという。ヒトの激増がいかに、地球社会の自然を激しく破壊し ているかがよくわかる。

 そこで、《これからの人間は地球の医師となって働いてほしい》とい うことになる。

 20世紀最大の発見といわれたDNAの構造解明(ワトソンとクリッ クによる。1953年ケンブリッジ大学)に始まる生命科学、いわゆる バイオテクノロジーの発展による「緑と地球生命の継承」がこれからの 重要な課題の1つになる。

 そして、ノイマン型(発明者の名前)コンピュータ(全ての情報を0 と1、言いかえるとNOとYESだけで表す)の発達とファジー(あい まい)コンピュータ、ニューロ(神経の)コンピュータの発展による情 報技術(IT)革命の進展と共に、私達人類が、「知的なヒト」=ホモ サピエンスというその学名にほんとうにふさわしくなるためにも、これ 等のテーマに取り組む必要がある。「自調自考」の幕張生諸君どう考える。


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平成12年(2000) 3月22日改訂