えんじゅ:134号

平成11年度第15期生卒業式


 去る3月1日、本校田村記念講堂において、第15期生の卒業式が 行われた。

 当日は青空の下、彼らを祝うかのような春の麗かなる陽射しにつつ まれ、卒業生355名は、それぞれの思いを胸にいだきつつ新たな出 会いにむけ、学舎を巣立っていった。

 本校で得た多くのことを、これからの人生で多いに生かし、国際人 として各分野で活躍する人となることを切に願う。

 彼等の行く末に幸おおかれ。

 以下、答辞を紹介する。

   答 辞   栄原 

 入学してはや3年、今日の卒業式を無事迎えることができました。 私たちは、そのほとんどが違う小学校や中学校で学校生活を送ってき ており、渋幕という場を通じて出会うことがなければ、全く関わりが なかったのかもしれません。まさに一緒に3年間を過ごすことになっ た渋幕での出会いは偶然でした。しかし、私はこの3年間で経験した ことは決して偶然ではなかったと思っています。私たちは、日々の生 活、体育祭や文化祭、修学旅行等の行事を通じて、様々な喜怒哀楽を 共にし、言葉では言い表せないほど沢山の思い出を作ることができま した。それを可能にしたのは、自分の意志を持ち、それを計画、実行 に移すことができる環境がこの渋幕にあったからです。そして、この ことは私たちの将来にもあてはまることではないでしょうか、未来は 決して偶然の連続ではありません。幕張高校は私たちに対して、未来 は自分の力で切り開いていかなくてはならないことを、教えてくれた のだと思います。

 今日から私たちは自分自身の選んだ道へ向かって突き進んでいきま す。その道は決して平坦なものではなく、時には路頭に迷い、責任と いう重圧を感じて途中で引き返したくなるかもしれません。しかし私 たちは孤独ではありません。校長講話で熱弁を振るって下さった田村 校長先生をはじめ、将来の夢に対し様々なアドバイスを送って下さっ た先生方がいること、この渋幕で得た大勢の良き友がいること、そし て常に支えてくれる保護者の方々がいることを思い出して、自信を持 って夢や理想に向かって、さらなる飛躍を目指したいと思います。

 最後に先生方、保護者の方々、在校生のみなさんの支援や助言が私 たちに大きな心の支えとなったことを感謝すると共に、これからも私 たち1人1人が立派なそして一人前の人間として成長していくまでを、 この幕張高校と共に見守ってほしいと思います。本当にありがとうご ざいました。

  そったくの記  附属中3学年主任 池口 

そったく−君たちの耳には慣れない響きだろうが、学校や教育のこと を語るときによく使われる言葉である。「そつ」とは卵から照ろうと する雛が殻の内側で発する合図の囀りを指し、「たく」とはそれに呼 応して親鳥が外から嘴で卵の殻を破り孵化を助ける行為を言う。「そ つ」に対する「たく」が早すぎても遅すぎても雛は死んでしまう。 「そつ」と「たく」との絶妙なタイミングは自然の采配の妙としか言 いようがないのだが、翻って、教育における生徒と先生−子供と大人、 としてもいい−も「そったく」のような関係だというのである。

 生徒(子供)と先生(親、大人)との係わりの中で、先生が生徒に 対して企図し期待することと、生徒の意欲や能力のありようが完全な 一致を見ることはそれほど多くはないだろう。しかし、この「一致」 が実現した瞬間にこそ生徒(子供)の内面は急激に成長し伸展すると 考えられるのであり、この貴重な一瞬は「そったく同時」と表現され る。

 今、中学時代を終えて次のステップを踏み出そうとしている君たち に、3年前の幼い姿の君たちを重ね合わせてみるとき、そこに歴然と して現れる圧倒的な較差に驚嘆を禁じ得ない。教師という名の大人で ある私たちはこの3年間、君たちの「教育」に努めてきた。払う努力 の割にはその効薄きを嘆く日々であったように思う。しかし、中3も 終わり近くなって君たちは、私たちのそうした足掻きにも似た営みを 嘲うかのように、鮮やかな変容を見せてくれたのだった。それは例え ば、合唱祭やニュージーランド研修で君たちが示した自主自律の精神、 より高きへ到ろうとする前向きな意欲と行動力となって発現した。そ うしたものこそ、私たちが日々君たちに求め続けたものではなかった か−。今、遂に私たちは君たちとの「そったく同時」に立ち会い、こ の言葉の至当なることを確認したのである。

 私たちはまた今日から新たな「そったく同時」を実現すべく、君た ちの次の「そつ」を待つことにする。


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平成12年(2000) 3月23日改訂