えんじゅ:140号

君たちに伝えたい言葉

−ノーベル賞受賞者と中学生の対話−

平成12年11月25日・本校田村記念講堂


 午後1時。司会の武内陶子ア ナウンサー(NHK)の透き通 る声で開会が告げられ、まさに 今世紀最後を飾るにふさわしい 一大イベントが幕を開けた。

 ノーベル賞受賞者をお招きし ての教育フォーラム「『君たち に伝えたい言葉』−ノーベル賞 受賞者と中学生の対話−」(読 売新聞社、NHK主催)がいよ いよ始まったのだ。

 お招きしたノーベル賞受賞者 は、1994年にノーベル文学 賞を受賞された作家の大江健三 郎氏と、96年にノーベル化学 賞を受賞された英国サセックス 大学のハロルド・クロート教授 の2名である。

 フォーラムは主催者挨拶に続 き、本校田村哲夫校長が歓迎の ことばを述べられた後、大江健 三郎氏の基調講演へと進んでい った。「君たちに伝えたい言葉」 と題された基調講演は、まず本 校中学生が書いた作文の添削指 導からはじまった。

 質問に答えて下さる両氏

 実はこの日のために、生徒た ちは大江氏の「なぜ子どもたち は学校へ行かねばならないのか」 という文章を読んで、全員が感 想文を書いた。その中から担当 教員が選んだ25編を大江氏 が添削してくれたのである。当 日、会場で講演に使われたもの は3編だけであったが、その添 削ぶりは温厚な氏の性格がにじ み出ており、きめ細やかな優し いものであった。当日使われた 3編と、大江氏の添削を受けた ものも含め、生徒たちの作文 は、すべて「フォーラム記念文 集」として刊行する予定なの で、ぜひご覧になっていただき たい。

 さて、講演は大江氏が幼少時 代から、いかに本を読むこと、 文章を書くことが好きだったか という話に移り、とにかく何で も良いから書いてみることだと 述べられた。

 さらに、大人は子どもの延長 線上にあり続いている。つま り、人間は過去と歴史に連続し ているもので、未来についてい うと、大人になる自分と、今現 在生きている自分は続いてい る。と述べられた後、「どうか 皆さん、今の自分の中の『人 間』を大切にしてください。これ が私の伝えたい言葉です。」と、 しめくくられて講演を終えた。

 時にはユーモアを交え…

 続いて登場したハロルド・ク ロート教授は、「バッキーボー ルC60の発見」という基調講演を 行われた。専門的で難解な内容 を予想していた生徒も多かった ようだが、全く予想をくつがえ す、わかりやすく楽しい講演で あった。クロート教授は、コン ピュータを駆使した映像をふん だんに使いながら、ご本人の趣 味だという絵画を含めた芸術の 話や、日本語で書かれた「見ざ る・言わざる・聞かざる」につ いて、およそ化学とは一見かけ 離れているように思える方向か ら話を展開していく中で聴衆を 引きつけ、「まず、好奇心を持 つあなた自身が重要です。何か を自分で作り出したいと思う時 は、一生懸命やり、決してあきら めないことを勧めます。利口な 人間より、強く興味を持った人 間の方が、うまくいく場合があ るからです。」と、述べられた。

 生徒代表から両氏に本校ペナントを贈呈しました

 20分の休憩の後、生徒たち の質問にお2人が答えてくださ るコーナーが設けられた。講演 を終えられてリラックスなさっ たお2人の回答は、時にはユー モアもまじえ、たいへんわかり やすく、又、参考になるもので あった。最後にクロート氏が日 本民謡の「草津節」を一節唄わ れ、続けて大江氏が「チョイ ナ・チョイナについて解明した い。」と述べられた。会場は手 拍子と共に驚きの声や笑い声が 起こり、なごやかな雰囲気のう ちにフォーラムは終了した。

 当日は1200名の生徒・保 護者・招待客が講堂を埋めた。 ご希望されながら講堂にご入場 できなかった方に、この場を借 りてお詫び申し上げたい。


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平成13年(2001) 1月23日改訂