えんじゅ:145号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXXX[)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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平成13年、2001年、2 1世紀の1学期が期待に満ちて 過ごされている。然し現実には 暗いニュースが心を重くする。 6月は、日本では1年中で最 も昼が長く、夜の 短い月であるのに 暗い印象が残るの は、勿論BAIU (梅雨)のせいであ る。学術用語とし て世界に通用する コトバである梅雨 のせいで、日本は 地球全体の平均雨 量の約2倍の降雨 量となる。(東京年 間降雨量1563mmはロ ンドン・パリ等の 年間500mmと比べ、 図抜けて多い。)国土の70%以上 が森林地帯であるのも、又梅雨晴 の素晴らしい青空を知るのも、こ の多雨による。自然は私達にいろ いろと教えるものだ。 「数学の文化史」(K・メニンガ ー著)によると、数の10進法は人 間が両手の指を使って数を数えて いた名残りであると云う。南米の 或る地域の20進法はその地域の 人々が両手両足の指を使っていた からだそうだ。又アラブ地域の1 2進法や60進法は、常に晴天小 雨地帯で自然に発達した星空の観 測の上で360度の割り算に有 効であったからと云われている。 四則計算は容易だが、指が偉 大な計算用具であることに気付く 前の最も幼椎な方式が2進法で、 オーストラリアのアポリジニの世 界である。こうした方式の違いを 私達はその民族特有の文化の違い と云う云い方をする。文化とは 「衣食住を初め技術学問芸術道徳 宗教等物心両面にわたる生活形成 の様式と内容」を意味するもの で、それぞれの人達(民族)が違 った自然環境のなかで社会生活を 営みそのなかで形成されて来た様 式=マナー=の総稱なのである。 日本がこのように多雨でなければ、 大半の日本文学、詩歌は生まれな かったであろうと評したあるジャ パノロジストの指摘は正しいもの である。(世界最古の女性による 長編小説・源氏物語はこうした背 景をもつ)その著「菊と刃」で特 に日本人に有名な人類学者ルー ス・ベネディクトの最初の学術書 はアメリカインディアンの部族の 「文化の型」の違いを明らかにし その比較の意味を勝れているか劣 っているかではなく、違っている ことに意味があることを明らかに したことで有名である。前出の例 で云えば、最も幼椎と云われる2 進法がコンピュータにより、今日 脚光を浴びている。こうした学問 の系譜は国際比較文化学としてレ ヴィ・ストロースやマリノフスキ ーに発展していく。(「アメリカ文 化にどうもなじまない自分」を意 識して生涯を送ったベネディクト がこうした学問を発展させたこと はまことに面白い。)多様な文化 が地球上に存在していることに重 要な意味がある以上、私達は私達 のこの日本文化を大切にしなけれ ばならない。そしてこれ等の文化 はマナーの総稱であるから、マナ ーを軽んずることなく次の世代に 伝える責務があることになる。 2500年前の孔子は、人格 の完成の要素に「礼」を置き、 「博文約礼」という言葉を残して いる。幅広く学問をして実践とし ての礼=マナーを重視して、人格 の完成を考えるのだ。近年日本 人のマナー規範意識の低下は日本 文化にとって大変な危機状況がお きていることを示していると考え るが。自調自考の幕張生よ、ど う考える。
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