えんじゅ:159号

中学副校長・各学年主任年頭言


自分の木に 自分の花を咲かそう   附属中学校副校長  和田

 ”新(あたら)しき年の始の初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)”

 万葉集巻20、掉尾(とうび)を飾る大 伴家持の歌です。

 都を遠く離れて、地方役人と して、しばしば不遇の時代を過 した家持だったから、新年の雪 に託して、今年こそ、吉(よ)い事(こと)が あるようにと強く願ったので しょう。

 昨年、私たちの中学校では、 英検で前年に続いて優秀校にな るとか、千葉市内の中学校女子 駅伝で初めて優勝するとか、早 大大隈講堂で、スタンリー・プ ルシナ先生、江崎玲於奈先生の 講演と、利根川進先生を加えた 3人のパネルディスカッション、 小柴昌俊先生のお話しを聞く機 会(フォーラム21世紀の創造) を持ったとか、他にも色々とう れしい事が重りましたが、みな さん一人ひとりにとってはどの ような年でしたか。1年を振り 返ると、多くの人は、あれはこ うすればよかったなど、満ち足 りぬものに気付かされて、今年 こそは、と心を新にします。今 という時代、いろいろな言論が 溢れ、情報が氾濫して、真善美 が捕えにくくなっています。そ れを見分けるには、自分を磨く しかありません。若い君たちは、 磨けば磨く程、生命に輝やきが 増して来ます。磨く方法?それ は幾つもありますが、その最た るものの1つは、まぎれもなく 読書です。そこには、偉大な人 が多くいます。その人たちの言 説、生き方をむさぼり食って下 さい。その営みの中から、君だ けしか持たない、個性、アイデ ンティティが育って来ます。そ うなって初めて、君は自分の木 に自分だけの花を咲かせるので す。少し難しいが次の言葉を紹 介しておきます。

 「最も個性的であることによっ て最も普遍的なものを蔵する思 想こそ学ぶに値する思想である。」  丸山真男

 君に光あれ、と祈る。


中1の頃   第1学年主任  藤井

 新年を迎えると、何故か年末 よりも押し迫った気分になる。 職業柄なのだろうか。そして、 つい来年度のことを考えてしま う。君たちはどうだろうか。

 私自身が中1の頃を考えた。 はっきりしないことが多い中、 よく覚えていることがある。そ れは、将来のことである。当時 父親が建設会社をやっており、 よく手伝いに行った。木材を 切ったり釘打ちしたり、本物の 現場作業である。その頃からか、 将来は設計士に成りたいと考え 始めていた。0から1を創り出 すことに憧れたのだろう。現在 の自分とは違うが、後悔はない。 むしろ、本物に接し、将来を考 えられたことに感謝している。

 そう言えば君たちも、進路学 習「身近な大人に聞いてみよう」 という課題がこの冬休みにあっ た。本物から聴き、自分の将来 に目を向けられただろうか。


新年に思う   第2学年主任  八田

 卒業生からの年賀状を見るた びに、人間の成長には節目があ ると感じます。6年間の中で、 誰もが通るであろうひととおり の失敗を経験し、大人になった 彼らから感じることは、節目節 目に変化をしていくことが大切 であるということです。失敗を 自分の糧とし得るかどうかで人 間は決まっていくのではないで しょうか。

 2学期は「自分を深く見つめ る」ことをホームルームで扱い ました。進路を考えていくには、 自分自身を知ることが大切なこ とだからです。年が改まるのも ひとつの節目ですね。改めて自 分を振り返り、何歳になっても 自分の中の鉱脈を掘り当てられ ることを信じて、心新たに一歩 を踏み出したいものです。

 「なんとなく 今年はいいこと  あるごとし 元旦の朝 晴れて 雲なし」 (石川啄木)


「ひとり」の強さを   第3学年主任  菅野

 中学3年生にとって、高校生 になる大きな変化の年を迎えま した。6年間の中ではBブロッ ク前期が過ぎただけのことでも、 世間では「高校生」という集合 に属する要素なのです。

 再び秋が来る頃には科目選択 という分かれ道が現れます。

 「自分を知る」学習で得たこ とを活かす時です。それまでに 心構えは出来るでしょうか。

 女子の卒業生で、動物アレル ギーなのに獣医を目指し進学し た生徒がいました。卒業後はさ らに外国で勉強を続けています。 同窓の結婚相手とは、しばらく 離れての生活です。

 修学旅行で、NZで、「友達 と一緒」に固執する人を見て、 彼女の事を思い出します。自分 は何をしたいか。これは1人で 決断し実行することです。無理 を承知でも。その強さが道を拓 くのでしょう。良い1年を。


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平成15年(2003) 1月 7日改訂