えんじゅ:164号

キラリ卒業生
〜世界を舞台に〜


世界は動く
第19代日本さくらの女王
東京大学法学部第1類3年 浅野さん(15期生)

 今春、ワシントン、フィラデルフィア、サンクトペテルブルクに派遣された。夥しい数の行事であった。ワシントンの桜祭りは、全米さくらの女王を各州代表のプリンセスから選出する大会もあり盛大で、ミッキー顔負けに山車に乗ってパレードもした。会うのは大使、社長などトップレベルの人達で、それ自体確かに特異であり得るところは大きい。


リナと私

 同時多発テロ事件を契機にセキュリティーが強化され、一般には見学すら許されていないホワイトハウスで米国大統領夫人にお会いした。さくらの女王のクラウンは純金と真珠なので、金属探知器にひっかかったが、何も怪しまれずに通された。VIP待遇である。ヴェルサイユ宮殿みたいな中を歩きながら、これはめったにない機会なのだと思った。なぜめったにないのだろう。一般平均人の人生を送ることを想定したからだ。しかし、一般平均人という人が存在するわけでもなく、私がそういう生き方を求めているわけでもない。何だか変な気がしておかしくなった。コペ転である。


プリンセス達と

 桜は日本を象徴する花である。政治や戦争のにおいもする。しかし、それ以上に友好の証であり、平和、愛、美のシンボルであり、人々が愛でる文化の薫り高き雅な花である。日本さくらの女王は、そんな桜を具現化した国際親善大使なのである。

 雪が降りそうな別の日、プリンセス達とポトマック湖畔で凍えながら植樹式をした。請われて日本語を教えたら、「さむーい」の大合唱になり、みんなで笑ってちょっと温かくなった。思うに、国際交流とはこういうことである。ふとしたことを笑い、不条理に対し怒り、涙し、戦い、創造する。全てが交流なのである。肩書きが運んだ偶然の出会いは、交わした言葉、雰囲気、その人本人に由来するものによって変容し、人と人との真の出会いになりうる。今夏、プリンセスの1人が日本に遊びにくる。プリンセスと女王としてではなく、彼女と私として再会することだろう。

 世界は、こうして動いていく。


ロシアの植樹式


SFエイブルアート活動に参加して
子安さん(4期生)

 Creative Growth Art Center と Creativity Explored of San Francisco は、サンフランシスコにある障害者の芸術活動を支援するNPOです。このアートセンターでは毎日、障害をもつアーティストたちが作品を制作し、そこでできた作品を隣接するギャラリーで展示販売する活動をしています。

 私はこの春、2ヶ月間このアートセンターに滞在し、自分の作品を制作しながら、ここで制作を続けているアーティストたちとのコラボレーションと展示会を行いまた。

 彼らは比較的重度の障害者で、言葉によるコミュニケーションが必要なワークショップは困難でした。そこで私が彼らと行ったのは、先に彼らが描いた画面の絵の具の上に、私の絵の仕事を重ねていくという、ごく単純な共同制作でした。彼らが私とのコラボレーションを理解しながら制作していたかというと、はなはだ疑問は残りますが、私の求めに応じて描いてくれたことは、それまでの数週間の滞在の間に、私を仲間のひとりとして受け入れてくれた表れとして大変嬉しく思えました。もちろん、できあがった作品はどれもすばらしいものばかりでした。

 また、展覧会では来場者の多さとエイブルアート(障害者美術)に対する関心・理解の高さに驚かされました。アメリカにおいては、障害者の一般社会への参加という福祉的な側面と同時に、アートのひとつのジャンルとして純粋に作品を評価する土壌がすでにできているのです。

 日本でも障害者の社会参加が徐々に浸透しつつありますが、アートの世界ではエイブルアートの認知度はまだまだ低いのが現状です。

 今回の私の経験が、日本のエイブルアートの活動のお役に立てられればと考えています。皆さんにもぜひ、エイブルアートに関心をもっていただきたいと思います。なにしろ、こんなにもすばらしい作品なのですから。

 ※今回のプロジェクトを報告するための展覧会が、来年夏に船橋市民ギャラリーで開催される予定です。


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平成15年(2003) 7月19日改訂