えんじゅ:185号


中3奈良修学旅行
        


 

 

 十月八日、秋晴れの日曜日。本校の中学三年生(中学十八期生)は、三泊四日の修学旅行へ参加するため、それぞれの夢と期待を手荷物にして東京駅から奈良へと旅だった。もちろん現地集合、現地解散を含めて、すべて各班ごとに検討された計画による活動である。そのために数ヶ月も前から「予習」を重ね、さまざまな角度から奈良を学習した。学習の一環として生徒とともに作った「青丹よし(奈良だより)」も四月の創刊号から、気がつくと、三十三号を数えていた。

 天気予報は雨。雨の奈良を覚悟しながら出発したが、初日は見事な晴れ。ただ二日目、三日目は予報通りの雨となった。そんな中でも、生徒たちは自分たちが予習してきた奈良を十分に堪能し、さまざまな感動をつかまえてきたようだ。そんな生徒たちの多くが、誰かにそれを伝えたくてか、食事時などにその感動を語っている姿が印象的であった。以下に掲げる俳句は、現地の二日目の夜に生徒全員に詠ませたものである。奈良での感動を素直に俳句にしてみようという取り組みだったが、生徒たちの真摯な取り組みに逆に感動させられた。生徒たちも感動を吐露する機会を求めていたのかもしれない。そんな生徒たちの感動を、生の声として以下に掲げたい。本来なら全員の感動の成果を見てもらいたいところだが、紙幅の関係もあり、無作為に選句した。生徒たちの感動の一端だけでも感じ取っていただけたら幸いである。

 畏敬かな堂に流るる天の川   小川

 秋の夜に吹き抜ける風天の風   奥寺

 夕暮れや思いにふける秋の空   桐山

 秋時雨疲労を癒す弥勒かな   寺西

 気まぐれは旅の友かな秋時雨   甲斐

 秋雨や鹿も木陰で雨宿り   笠原

 赤とんぼ古き飛鳥を天翔ける   西本

 岩船寺石仏あおぐすすきかな   野口

 霧の中微笑みかける如来かな   吉田

 キンモクセイ古都の夢殿香り立ち   増本

 秋時雨負けずに立てり仁王像   森本

 道を聞き秋冷え忘る人の情   山本

 法隆寺時間を語りし渡り鳥   加古

 秋時雨際だつ奈良の優雅かな   田中

 秋雲や奈良の歴史を閉じこめる   船橋

 正倉院秋風抜ける古都の街   岡田

 鹿の脚力士の像とは大違い   福井

 秋晴れの雲を突き刺す五重塔   槇本

 行く飛鳥尾根にかかる霧深し   溝口

 秋深し紅く染めるや浄瑠璃寺   森近

 亀石や甲羅潤す秋時雨   山原

 日は尽きて雲より覗く月夜かな   越川

 秋曇五重塔にのしかかる   福本

 秋雨の雫が垂れる笠置山   和田

 降りしきる秋時雨にもうちいでて   高橋

 秋曇暗きにそびえる大如来   出水

 秋時雨鐘響くかな飛鳥寺   西村

 大仏も隠れてしのぐ秋時雨   松本

 繁栄を隠すススキや平城宮   森美

 吉野山雲の中鳴く雨蛙   小副川

 吉野山樹木がはばむ秋時雨   安原

 霧降れり古き飛鳥の鬼いずこ   石倉

 秋時雨緑がとける浄瑠璃寺   内川

 秋時雨自転車乗って古都めぐり   田中

 幾千の秋が巡りし飛鳥寺   戸島

 猿沢の水面に立てり白き鳥   光守

 流星にあわやぶつかる五重塔   吉田

 虫の音に空気止るや慈光院   柴 

 秋時雨行く手を阻む細い針   寺田

 塔を背に闇に煌めく星月夜   平手

 白鳳の空までとどけ曼珠沙華   福田

 都会とは深さが違う天の川   村上

 紅葉やまだ顔見せぬ神無月   片野

 秋時雨帰るの声ふる浄瑠璃寺   江

 三蔵院たたえる黄金は月か陽か   吉田

 




中1鴨川研修




 

「炎の命」
     大木

 この感覚は久しく感じていなかった。口もとがゆがむ。じゃがいもの皮が思うようにむけない。これこそまさに女の終わりだ。

 「おい、貸せ−。」

 「はいっっっ!?」

 男に手伝ってもらうのは癪にさわったが、これも班のためだ。苦労しながらもどうにか野菜は切れた。

 次は火をおこしながら料理をする作業だ。作業をしていると灰や煙がくる。眼が痛い。何度もまばたきする。手は鍋の中身のでこぼこの野菜たちをおたまで混ぜている。が、目は後ろ向いていた。炎の中に新しい薪を入れた時に、手元までのびてくる火がきれいだった。

 完成したカレーは真っ白い灰が入っていたがおいしかった。そんなカレーをつくった炎たちは、いつしか風と砂ぼこりにけされていた。

   鴨川研修は中身ぎっしりの充実したものだった。

 浜金谷までの行程を調べ、一人一役の係活動をこなし、レクで互いに盛り上がったり、そのうえに鋸山登山、マザー牧場、南房総の海辺で自然の中に溶け入り、地元の産物をつくる生活を体験したりと、盛りだくさんの十日から十二日までの研修だった。

 例年のコースに頂上を目指す探検隊コースを加えた登山は、初日の大イベントになった。霧雨の中、生徒の顔は汗と喜びで光った。マザー牧場の飯盒炊さんのカレー作りは男女混合の六人班で取り組んだ。出来上がったカレーは、どの班も辛めのルーが皆の悪戦苦闘を思い出させた。

 最終日夕方、クラス毎の研修地からそれぞれ帰校した。






中2会津研修




 

 十月十日(月)より十月十二日(水)にかけて、中学二年生の会津研修が実施されました。

 大きく天候が崩れることもなく、生徒たちは予定通りに行程を進めることができました。

 昨年度は、天候が崩れ、研修の行程を変えざるを得なかっただけに、生徒の喜びもひとしおだったようです。

 初日は、出発から班行動を実施し、会津での活動が終了した後、現地のホテルで集合しました。二日目も終日、班行動を実施しましたが、生徒の成長振りには驚かされるばかりで、自調自考の精神にのっとり、真面目に活動に取り組んでいました。三日目の五色沼散策における生徒の楽しげな様子からも、研修の充実、成功がうかがえました。

 今回の研修では、レポートの作成と同時に体験学習を必須項目としました。生徒達は、漆器やそばなどの会津独特の文化に触れ、興味を深めてくれたようです。

 その研修の様子を研修生活委員長の石川さんに報告してもらいます。

「会津研修を終えて」
         石川

 私達中学二年生は、研修へ行くにあたって、それぞれが自分のテーマを決め、それによって班を作りました。また、自分達で行程表を書き、現地集合という一つの目的を達成しました。これは私達が野田、鴨川、鎌倉の研修の経験を生かし、十分な準備をすることができたからだと思います。また渋幕の教育目標である自調自考を実践できた研修にもなりました。この会津研修では、研修の核とも言える目標がありました。それは体験学習を行いその体験に基き、レポートを書くことです。体験学習ではたくさんの伝統工芸品や名産品を作りました。例えば『赤べこ』『ろうそく絵付け』や東北最古の焼物『流紋焼』などがその一例です。また、ソバやカルメ焼きなども作りました。私達の班は鈴善で漆塗りの茶碗の加飾をしましたが、そこから会津の文化の一端に触れることが出来たと思います。そしてそこから会津という地域に対する私の認識は、東北の一地域というのではなく、すばらしい歴史を持つ土地なのだというものに変わりました。来年の奈良研修でも、研修を通して、奈良という都市が、私達にとってもっと身近なものになることを楽しみにしています。

  


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平成17年(2005)11月30日改訂