えんじゅ:212号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCCIII)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 六月、梅雨の季節を迎える。 梅雨はBAIUとしてTSUNAMIと 共に世界に通用する学 術用語である。

 北海道を除く日本全土が暗 くジメジメした梅雨となる。 紫陽花(あじさい)の美しさが 暗さの中に一際目 立つ。

 陰暦六月の別称 「水無月(みなつき)」の「な」 はないの意味にと られて「無」の字 があてられている が、本来は「水之 月(みずのつき)」  − 田に水を 引く月 − 田植え の終了する季節を 示している。五月 の梅雨入り前の 快適なシーズン= 五月尽(ごがつじん)に渋幕のスポーツフェス ティバルが無事終了。

 中学の研修行事=野田・鎌倉 も終り一学期の大きな行事は終 わった。日本の豊かな四季の変 化が実感されるこの時期、今年 北海道で開催されるサミットの テーマ 「環境問題」を考える。

 今やすっかり身近なものと なった「環境問題」 の結果、21 世紀、人々は、「人類は地球とい う一つの閉じたシステムの中で 暮らしている」「現在の生活を支 える資源は有限である」「経済活 動に伴って二酸化炭素を大量に 排出したり、大気や水を汚し続 ければ、自然のバランスが損な われ、人類が生存出来ない環境 になる可能性が高い」というこ とに気付く。

 然し「環境問題」 の解決には 今迄人類が経験したことのない 難しさがある。嘗て、日本を含 む先進国では、工場排水排煙に よる水質や大気の汚染、いわゆ る「公害」が社会問題となった。 こゝでは「汚染物質を処理せず 垂れ流した加害者」が存在し、「そ れによって健康を損なわれた被 害者」がいるという被害、加害 の構図がはっきりしていた。と ころが環境問題の場合は、二酸 化炭素など温室効果ガスによる 地球温暖化、それに伴う降水量 の変化や砂漠化、フロンガス等 によるオゾン層の破壊、酸性雨 など全て利便性を求めてエネル ギーを大量に消費するライフス タイルから出ている問題で、誰 れもが加害者の可能性があり公 害問題のように加害行動が特定 出来ない。そして問題をさらに 難しくするのは、「多くの環境問 題は科学的に因果関係がまだ立 証されていない」という事であ る。現在でも二酸化炭素による 地球温暖化に異論を唱える科学 者がいる。その根拠は地球温暖 化は単純なイエス、ノーで語れ るものでなく、科学的には不確 実性の中にある現象であり、予 測されるシナリオでは地球冷却 化へと結果が変化することも予 測出来るからである。

 然し現在想定される最悪のシ ナリオが現実になったときは、 次の世代、私達の子孫が最大の 被害者になることだけは明確で ある。「いま必ずしも顕在化して いないリスクに何らかの手を打 つことで未来の人類への責任を 果たす」という現世代の人々の 倫理観こそが、地球環境問題へ の取り組みを根底で支えている。

 現在ユネスコは「事前警戒原 則」precautionary principleとい う考え方を押し進めている。つ まり「リスクが予想されるもの については、明確な因果関係が 証明されなくてもリスクをあら かじめ避ける方策をとる」とい う原則。自調自考生どう考える。

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平成20年(2008)9月10日改