五月、皐月。地球が太陽のまわりを一周する時間の長さを一年とする太陽暦。月が新月から次の新月となる迄を一ヶ月とする太陰暦。日本の旧暦は太陽暦と太陰暦を組み合わせた太陰太陽暦のことだ。新月の日は毎月一日となる。又季節は太陽暦の一年を四等分した春夏秋冬とし、ほかに季節の移ろいをこまやかに表現する二十四等分した二十四節気と七十二等分した七十二候がある。(『日本の七十二候を楽しむ─旧暦のある暮らし─』白井明大・有賀一広より)、今頃は立夏、末候竹笋生ずとなる。
私達日本人は暦注の先勝、大安など六曜(六輝)も使い、宇宙を科学的に観測し、天文を学問として研究活動の対象にして熱中すると同時に生活実感への暖かい肌ざわりを愛する生活感覚を「こよみ」として残し大切にする文化を残している。
旧暦での「皐月」は「早苗月」の意味だと云われ「新緑競う五月」は、まこと「瑞々しい」。学内では今桜は葉桜となりフェアリークラブの丹精こめた薔薇が校内いっぱいほころび出している。
また「新緑」といえば、若緑は松の新芽の緑で、浅緑は柳の新葉のことと日本語は使いわけ、この時期を楽しんでいる。
英語の五月MAYはラテン語のマリウス(成長の神)を五月一日に祀ったことに因む。
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也」松尾芭蕉が弟子曽良を伴って「おくの細道」に旅立ったのが元禄二年三月二十七日(新暦五月十六日)。これに因み、この日が「旅の日」とされ、五月はいかにも新学年のスタートの時期にふさわしい。
ところで、今年、幕張中学高校は三十二年目の活動に入り、そして学園の法人渋谷教育学園は創立九十年を迎える。
二十一世紀という新しい時代が求める人材が巣立っていく学園づくりを目指し、「自調自考」゠Learning to be 未来への学習、「国際人」゠ Diversity 柔軟寛容の美徳、そして「高い倫理感」゠ethics, a code of conductの三つの教育目標を目指しての三十二年の活動であるが、学園の九十年前の目標は、その時代(一九二四年大正十三年)が求めた「女子教育」の充実であった。
フランス大統領F・オランドは就任時の讃辞演説で尊敬する人としてジュール・フェリーを選んだ。フェリーは現在のフランスの教育の根本原則、ライシテの原則(宗教からの教育の独立)を確立し義務教育、女子教育に力を入れ、第三共和制下で国民教育を完成させた人。首相、パリ市長を務め一八九三年三月死去。国葬された。
現在フランスではライシテの道徳教育の導入計画が進行中で国民の実に九割以上の支持を得て、二〇一五年に道徳教育が実施されることになっている。
今日、日本でも道徳教育教科化が議論されている。そして同時に「私のことは私が決める」という理念のもとで作られた国連の障害者権利条約もようやく今年批准されることになっている。(国内法整備)
今日多様な価値観の下、どのような道徳教育が出来るのかは、日本だけでなく世界のかかえる重要課題である。私はこの問題の鍵は「日本社会の成熟に必要な批判精神を涵養させること」にあると考えている。自調自考生どう考える。
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