えんじゅ:120号校長先生講話 |
|
|---|---|
「自調自考」を考える(そのCXV)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
|
|
本年も、学園最大の行事である槐祭が無事完了した。 今年のテーマは、「! 意外性を求めて」。 第二次大戦中のナチス体験記録『強制収容所における一心理学者の体験』 =日本訳『夜と霧』の著者として有名なヴィクトル・E・フランクル教授は その近著『生きがい喪失の悩み』のなかで、「どの時代にもそれなりの 神経症があり……今日の典型的な患者は、底知れない無意味感と空虚感の結合、 私はこれを実存的真空と呼んでいるが、これに脳まされている。つまり 実存的な欲求不満と対決しているのです。現存在の意味を絶望的に探し求めて いる私達」と述べ、現代を生きる状況を「外向きには徹底して何不足ない 幸福な生活のなかでの究極的な無意味さの底知れない感情」に悩んでいると 表現している。そして、「閉塞感に溢れ、チャレンジ精神と未来への自信を 失っている日本」(堺屋太一)に生きる現代の青年達が、次の時代に懐く おもいを、「意外性を求めて」というテーマに託したことに私は、強い共感と、 深い感動をおぼえた。 色とりどりの傘をモチーフにつくられた入場門をくぐった来客数は、七千人 近く、天候に恵まれたとはいえ、最高記録の来場数で、この行事が地域と いうより首都圏での特徴ある社会的存在となっていることを示してくれた ようであった。 中三生諸君の学年演劇コンクール、ディベート招待試合(解説付き)、 古代人の生活体験コーナー、帰国生及び父母による外国料理コーナー等々、 あまり他に例をみることのない大変興味深い表現学習の成果の数々を満喫 させてもらったのであったが、全てに共通していることとして、参加生徒達の 生き生きとかがやく目に強く印象づけられた。 私の知人に「難民を救済する会・対人地雷廃止運動」に携わり、熱心に活動 している一老人がいるが、その人が熱っぽく運動を語る時の目のかがやきを おもいだした。この運動は、長野オリンピック最終聖火ランナー、クリス・ モンタン(英国)で有名となっているが、地雷(mine)の埋設、撤去は まさに、国家主権の中核にかかわる軍事的行動となる為、撤去の援助は、 基本的にNGO(非政府組織)活動でなければ、成り立たないこと。そして 世界中に、一億一千九百万個の地雷が埋設され、毎日七十人(その多くは 子ども)の被害者が出ていること。対人地雷は人の足や手や目を失わせるが 殺すのではないので、被害者は、その後の人生を障害をもっている人として 生きていかなければならないこと。その為には援助が不可欠なこと。そして 援助を必要とする処は、アジア(カンボジア・ラオス)、アフリカ (ザンビア・アンゴラ)、ボスニア等民族紛争の激しい開発途上国の地域で あること等を私はこの人の目のかがやきに魅せられながら知ったのである。 自調自考の幕張生諸君、願わくば、これからの人生において、あの目の かがやきを失うことなく、自信と未来へのチャレンジ精神をもって生きて ほしい。
|
|
![]()
|
|
| えんじゅ表紙へ | |
![]() |
|