えんじゅ:122号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXIX)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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二月、渋谷幕張中学・高校を目指した、新入生「自調自考生」が決定した。 そして、白調自考の体現者である十四期生を、世に送り出す二月二日を、迎える。 冬薔薇の長き愁眉を開きけり 有馬朗人 二月(陰暦)は寒さのために衣を更に重ねて着るところから《衣更着》とも呼ばれる。 又節分(冬の節から春の節にかわる日)ではじまり立春を迎える月でもある。 立春を迎えると、春の到来を感じ、農事にとりかかる準備態勢に入っていくのである、光の春。 ところで世紀末、千年期と言われる時代の転換期を迎え、今二十世紀の総括が華やかに言われている。 江崎玲於奈博士(ノーベル物理学賞受賞者)によれば、科学技術の分野での二十世紀の業績は、 ATOM(原子)、GENE(遣伝子)そしてMIND(知性)の三つであるとのこと。 原子・遣伝子(DNA)の構造解明と知性の機能を高めるコンピュータの進展。確かに今世紀の 科学は非凡な科学者達の活躍で、革命と言って良いほどの動きで彩られた。その結果全ての人の 事物の本質に対する内的な感覚を動かすような、広くかつ深い転換が生じた。第一は物理学で、 第二のものは生物学で起こった。物理学はマックス・プランクとアルバード・アインシュタインの 量子論と相対論によって今世紀初頭大革命を起こし、量子力学の現代的形は三十年代に出来あがる。 その後現代迄はそれ等の偉大な発見とそれに由来する視野の転換を発展させることが中心であった。 生物学の革命は三十年代に始まって一九七〇年にある種の結論に到達した。 この五十年ほどの間に生命の本質に対する統一的な考えが形成された。 この科学は物理学とは異なる意味で魅力がある。「分子生物学」といわれるこの科学は生命 の神秘のヴェールを取り除いて、私達に生命現象を身近なものとした。ジェームス・ワトソン、 フランシス・クリックのDNA構造解明、ジャコブとモノーによるオペロン説等この間の刺激的 又魅惑的逸話に事欠かさない。このような科学の劇的発展に彩られた二十世紀の終わりを迎え ようとする今、科学の将来を考えることは、新しい世紀に生きる幕張生諸君にとってなかなかに 重要である。「科学」という日本語はニュートン以降今日迄の主流のサイエンスのありようを 実によく言い表している。「科」には「分ける」という意味があるから科学は分ける学問と いうことになる。実際近代科学はものごとを「基本構成要素」に分解し、ものごとの性質を それら基本構成要素の性質に還元して説明しようとしてきた。 物質の振る舞いは素粒子に、心の活動は化学物質に分解され説明されてきた。これに対し 「全体は部分の総和以上である」と考えるホーリズム(全体論)的手法による科学がこれから 支配すると言われている。「新しい科学」( emerging science 「学際」 )が始まると。
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