えんじゅ:135号
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私たちを乗せたNZ航空99便は、滑走路に出るやそのまま加速し、たちまち空中へと舞い上がった。オークランドの街並、白く波立つ海岸線などが見る見る小さくなる。片雲の気配さえない碧空の遥か眼下には、ブルーの濃淡を微妙に変えながら南太平洋の珊瑚礁がどこまでも続いている。忽然と広がった夢のような眺望に半ば陶然として見入っていた私たちの脳裡に、それまでの二週間の日々が蘇ってきた。 私たちが成田を発ったのは、春にはまだまだ遠い寒さの中だった。そしてその半日後には真夏の日差しの中でニュージーランドの地を踏んでいた。遂に来た、というのが参加者全員に共通の感慨であったにちがいない。思えば五月のオリエンテーション以来、九ヶ月に及ぶ準備を経て、保護者のご理解と経済的負担の上にはじめて現実のものとなった海外研修である。誰もが充実した有意義な日々にしたいと希ったはずだ。未知なるモノヘの漠たる不安もあっただろうが、それはやがて幾つもの心揺さぶられる体験を通して、新しい自分を発見するという無上の成果に昇華した。心やさしい人々、豊かな自然の中の生活とそこでの時間のゆるやかな流れ−−忘れ得ぬ思い出をいっぱいに抱えて私たちは、浅い春の薄暮の風景の中を懐かしい家族のもとへと急いだ。 (学年主任 池口 ) |
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