えんじゅ:137号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXXX)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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夏休みを迎え生徒諸君は、毎日の生活の過ごし方の主導権を学校から取りもどす。中学・高校の生徒諸君の日常は、平均的には睡眠七時間半、学校で六時間、学校外学習二時間半、テレビ一時間半、その他となっている。(文部省) これが、毎日十時間以上の時間をどのように過ごし使うかが、一人一人の考えで決められる夏休みとなる。進路を目前として、夏休みこそ天王山と考え計画を練っている人、自分の課題(テーマ)を決めてその為の時間活用を考えている人、まだどうするか迷っている人等いろいろあろうが、夏休みの六週間こそ、一人一人が自調自考の精神を発揮して、生活計画の立案、積極的目標の実行達成されることが期待されるのである。そしてこの結果が、その後の学枚生活にも大きな影響をもたらすことでもあるので、充分に実りのある六週間となることを願っている。 処で「目標」と云えば、今我が国では 「創造性」を育成することが国として最も重要な目標となっている。そしてこのことに関して、よく使われる 「科学・技術」という言葉を、江崎玲於祭博士(73年ノーベル賞)は、「科学」と「技術」とは、それぞれ全く違った概念であって、これを便宜上一つの言葉として使ってしまっていることが、創造性育成にとって大さな障害になってしまっているとのではと問いかけている。 これは大変大切な指摘であると考える。「科学」とは「世界の一部分を対象領域とする経験的に論証出来る系統的な合理的認識」(広辞苑)のことであり、「技術」とは「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に利用するわざ」(広辞苑)である。 科学も技術と共に人間にとって大変重要であるが、共に重なり合う部分もあると思うが、主に科学は「発見型」であり技術は「発明型」なのであろう。ものごとの成り立ちや存在そのものに疑問を投げかけ、心理発見への思考行為が科学をつくり、どのようにしたら目的に効率的、効果的に到達出来るかを考え、自然の力や法則を利用して、事物を創作するのが技術なのである。 科学は研究でホワイ(why)を求め、技術は開発として、ハウ(how)を追うことになる。 江戸中期の天才思想家富永仲基は、日本文化は東洋の文化の中にあって、<絞>という言葉で象徴される「物造り」を尊重し、それにたけたという特色を持つ文化であると指摘した。この点は、「産業革命」を世界に先駆て実現した「物造り」を尊重する英国の国民性と大変似ている特色があると云われているが (比較文化学者クラーク)、これからの時代の「創造性」は、従来日本人が得意と云われていたハウ型(もの造り)と同時に、力強いホワイ型(創意を生む力)が求められているのである。夏休みこそその余裕を生かし、マニュアルに頼らず自分でじっくりと考え「なぜ」という自発的問いかけに答える学習をしみてたらどうだろう。自調自考生よ!
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