えんじゅ:151号校長先生講話 |
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「自調自考」を考える(そのCXLV)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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2月、如月「日脚伸ぶ」「春 隣」といった季語が使われ、光 の春といわれるいま、渋谷幕張 の中高新入生が決定し、3月に は、弥生、日平均気温が5度以 上となる「植物期間」を迎え、 草木のいよいよ生 い茂る月「いやお ひづき」に、自調 自考の17期生を 送り出す。 冬薔薇の長き愁 眉を開きけり 有馬朗人 新しい出発を寿 ぐように、記念講 堂のお庭には、薔 薇の新春の薫りが 馥郁とただよって いる。 21世紀は、 02年9月11日から始まると 言われている。その21世紀 に活躍する17期生にとって、 ここで、この言葉の意味を探求 することは、大変重要なことと 考える。 9月11日とは、言うまでも なく、米国ニューヨーク市に起 きた”同時多発テロ事件”のこ とである。そしてその1ケ月後 の米国を中心とした多国籍軍に よるアフガン攻撃。これは、ま さに米国の政治学者S・ハンチ ントン(ハーバード大)の唱え ていた「文明の衝突」そのもの の事件であった。 ハンチントンは、世界の文明 圏を、中華、日本、ヒンズー、 イスラム、西欧、東方正教会、 ラテンアメリカ、アフリカの8 つに分類し、西欧対非西欧の対 立、とりわけ西欧文明とイスラ ム文明の対立は激化し、和解は ないとする。アイデンティティ ーや宗教などを国際社会の分析 の主要な要素とする新たな理論 的可能性を示すものとして、発 表当時世界の注目を集めたが、 まさにその理論通りの事件が現 実のものとなったわけである。 イスラム原理主義宗教と西欧 キリスト教の対立は、まさに1000 年前の十字軍による戦争を想い 出させるものであり、人類社会 にとって「戦争と大虐殺の世紀、 そしてイデオロギー対立と科学 技術の世紀」と言われた20世 紀が終り、新しい夢と希望に満 ち、無限の可能性の「大聖年ミ レニアム」で始まった21世 紀の人類社会を暗澹たる思いに つき落としたのである。 然し、一方21世紀は”ハ イブリッド・ヴイガー Hybrid Vigour”(雑種強勢)の時代に なるとも言われる。 対立、抗争の歴史の経験から、 人類は異なるものを排除、抹殺 するのでなく、相互理解と共生 の道を探る賢明な生き方を身に つけようとしているのである。民 族のメルティング・ポット坩堝 として、自由の旗印の下、世界 最強の国として、現在世界に君 臨している多民族国家アメリカ 合衆国は、西欧文明の族手とし て、イスラム文明と対立した一 方の旗頭であると共に、ハイブ リッド・ヴィガーの実践者でも ある。プリンストン大、スタン フォード大等米国での有力大学 では、アラビヤ語履修者が急増 している。又私の親しくしてい るウインチェスター校生徒(英) は5つ目の語学履修をアラビヤ 語と決めている。 卒業生諸君、自調自考の幕張 生諸君、これからの21世紀 がどうなっていくかを見掘え、 未来の準備にとりかかってほし い。「雑種強勢」を忘れずに。
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