えんじゅ:162号校長先生講話 | |
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「自調自考」を考える(そのCLW)幕張高等学校・附属中学校校長田 村 哲 夫 |
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平成15年、2003年、 中学で18期生、高校で21 期生を迎えての希望にみちた新 学年がはじまった。 21世紀も3年目となっ て、いよいよ世界はその混迷の 度をまし、キリスト教文化とイスラ ム教文化の対立衝突ともいわれるイ ラク戦争もあって、この世紀も、 未来そのものである青少年諸君にと って、大変目標の立てにくく、生き ることの難しさを実感させられる時 代となっている。 米の社会学者、哲学者エリック・ ホッファーは「激烈な変化の時 代において未来の後継者となり うるのは、学びつづける人間で ある。学ぶことを止めた人間に は、過去の世界に生きる術しか 残されていない。」と述べこの 時代に求められる生き方を示唆 している。この時代学びつづけ ることが何より大切なのである。 前号でも触れたように、個人の 尊重(憲法13条)は、それぞれ の個人の人格(ペルソナ)の尊厳(憲法24 条)に基づく。このことを意識 することがこれからの若者にと って特に重要であると考える所 以(ユエン)はここにある。 つまり人間像を”自信にあふ れ、合理的に行為する”いわば 「完全な個人」と捉え、それぞ れがいかに生くべきかについて 聡明に判断し行為する存在とみ ながら、他方で苦しみ挫折感を もつ弱き存在としてみることに よって、正しい人間としての生 き方を理解することが出来る。 ホッファーはこれについて次 のように述べている。「人の高 貴な属性(勇気・名誉・希望・ 信念・義務・忠誠など)は容易 に無慈悲さ、残酷さへと変質し うる。その中にあって唯一思い やりだけが、最も有毒な衝動で さえも抑制出来る。 人が自分の人生の作成者とし て常にその尊厳と尊重を分けて 考えることがよく出来ないのは、 人間がこうした複雑な存在だか らである。つまり、弱者への思 いやり、配慮を持ててこそ、人 は”合理的存在”として正しい 判断行動が可能なのである。 自分をしっかり持って育て る=自調自考・人格の尊厳を意 識する=ということと、弱者を 思いやる心=個人の尊重=は、 これからの若者にとって、どち らを欠いても21世紀は生き 抜けないということだ。 国際協力によってヒトゲノム (人間の全遺伝情報)を解読し ようという努力が、本年4月1 4日完了した。DNA(デオキ シリボ核酸)の二重らせん構造 の発見から50年後に実現した 完全解読は、生命科学研究を飛 躍させると期待されている。 (日本は米・英に次ぎ3番目の 貢献で6%解読、他に仏、独、中 国) このゲノム解読により、構成 する化学物質(塩基)の数は約 30億7000万個、人間の遺伝子 の推定総数は32615 個とわかった。(ショジョウバ エの約2倍程度、チンパンジー のゲノムとは数%しか違わない) 然し、ゲノム解読の過程で人 間が遺伝子(所与の条件)と環境 (形成条件、変えられるもの) の相互作用でできていることも わかった。遺伝的決定論では人 間は分からない。生涯学習を。
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平成15年(2003) 5月19日改訂