えんじゅ:170号
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まずは聞き手の肩を揉みほぐすところから−。「笑うときに笑い、眠くなったらきちんと眠る。 医者と坊様はやりにくい。じっと見つめられてこちらが話しづらい。それと学校の先生もダメ だね。」聴衆の笑いをきっちり取ったが、眠る者はなかった。 演題「青い鳥のゆくえ」に従いメーテルリンク作『青い鳥』が語られる。人々の認識として 幸せの象徴「青い鳥」。原作では、家に戻ったチルチルとミチルがそこに青い鳥を見つけ、幸 せはじつは身近なところにあるものだったと知るや、無情にも鳥は何処かへ飛び去ってしまっ た。兄妹はひどく落胆して物語は終わるのだが、そこで五木流解釈。真実に気付いたときはも う遅いという状況が現実の世の中には多々ある。現実とはまことに残酷な場であると。 人生が厳しく、時に残酷なものであるものであるとし、そこでゴーリキーの言菓。「たしかに 人生というものは残酷でひどいものだが、だからといって投げ出すほどひどくはない」。厳しさ が原則の世の中で、たまたま出会えた善いものに心から感動しようとの提言。たしかに五木さ んの述べられる通り、現代社会は乾いて世知辛い。心に潤いを取り戻すべく、涙の効用を説い てまとめとされた。 多くの著書に繰り返されたお話ではあったが、五木さんの肉声が心の奥深く沁み通った。中 学生は『夜明けを待ちながら』を事前に読了。ご家庭にてもぜひ一読願いたい。
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平成16年(2004) 5月 10日改訂