えんじゅ:175号
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かつてこんな研修があっただ ろうか。少なくとも、僕達には なかった。 高校生になり、初めての研修 となった今回の「広島」。テー マは平和学習だ。だが、出だし から僕達に災難が襲った。台風 による厳島神社倒壊の話や、広 島で起こっている発砲・殺人事 件などの悪いニュースの数々だ。 今から大規模に平和について考 えようという前に、自分達の平 和を求めることが先になってし まった。何とも残念な話である。 一日目、僕の班は原爆ドーム を訪れた。青空の下そそり立つ 原爆ドームは、何とも妙な一体 感を示し、悲しいほどに輝いて いた。その後、平和記念資料館 へと向かった。そこで特に印象 に残ったのは黒い雨が染み込ん だ壁と、焼けた時計である。僕 はこれらを見たとき言葉を 失った。本当の恐怖とは、言葉 に出来ない、こういうことなの だろう。 二日目、宮島へ向かった。こ れは個人的な意見だが、厳島神 杜の大鳥居は、海に浮かんでい るからこそ生まれる孤独感や、 水面に映るもう一つの存在の美 しさ、更に背後の山に色付く燃 えるような紅葉との雅やかな合 致によって絶景と称されるもの だと思う。そして僕はそれを期 待していた。だが実際に行って みると、運の悪いことにちょう ど干潮時、雨という悪天候、更 には本体の厳島神社が修理中と いったことが重なり、鳥居を間 近で見られたことは嬉しいが、 とても鑑賞に浸るどころではな かった。 三日目、新たな台風の接近に より行動範囲が広島駅周辺(と いっても殆ど広島駅構内を指 す)となってしまった。そして 帰り、新幹線には乗れたもの の、台風の影響が強く新大阪で 足止めを食らった僕達は三つの ホテルに分かれ、そこで一夜を 過ごすことになった。 こうしてある筈のない四日目 の朝を迎えた僕達は、無事に家 に帰ることが出来たわけだが、 溜まりに溜まった疲労には言い 知れぬものがあった。 こんなことが書けるのも、体 験できるのも、今が平和である からだろう。確かに世界中が平 和かと訊かれれば、「はい」と は決して言えない。だが平和と は意外と身近にあるものかもし れない。それに一人ひとりが気 付くかどうかで、世界は変わる だろう。今回の平和学習。広島 で見つけられたのは、失った過 去よりも明るい未来を目指す前 向きな姿勢の、温かい人々の、 大切な存在だった。
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平成16年(2004)12月1日改訂