えんじゅ:201号

校長先生講話


「自調自考」を考える

(そのCXCll)


幕張中学・高等学校校長

田 村 哲 夫


 平成十九年、二〇〇七年渋谷幕張中学高等学校の二十五期生 を迎えての 「夢」一杯の新学年がはじまっている。
 春休み期間中、中三のニュージーランド研修の他、高校生達の英 国、シンガポール研修等海外研修が実施され、多様な経験を胸に生徒諸 君の新学年がはじまっている。
 虔みて、釈奠に侍し
 学徒たり
    坂田苳子
 存在がそのまゝ未来そのものである青少年にとって、 将来の見通しが立てにくい時代はまことに生きにくく厄介な時代になる。
 グローカリズム (=クローパル(地球規模)な視野とローカル(地方地方の)な視野を結びつけ た見方)といわれる二十一世紀を支配する考え方は、別の云い方をすれば、「多様な考え方」 Diversityの支配する時代ということになる。
 このような時代を生き抜くには、一人一人が自分の持って生まれた「力」を精一杯鍛え上げ、 何がおこるかわからない時代に備えることが肝要。今回は、人間の「力」のなかで、最も有効な 働きをすると予想される「脳力」を鍛えることを考える。
 「脳力」を強化するには、身体を動かすことが重要だというのが 近年の定説である。小さい人の脳が大きいイルカの脳より優れて いるのは、人が手や指を常に使っているからだと云う。
 人は「学ぶ」ことを「まねぶ」からはじめる。この「まね」は、 脳力にとって全ての出発点のようである。子どもは同じ絵本を何十 回となく読み聞かせを求める。同じ話のすじを何回でも聞くこと で、人間には、脳に似たものを見付け共有したつもりになること によって快楽を感ずるニューロンが働らくという構造がある。こ の働きを利用したのが基礎学習と云われるものである。
 答えのわかっている計算練習を繰り返す。事項、単語、語彙等 の繰り返しによる暗記はこれに当たる。一方で人間の脳の快楽系 は、「いつもと違う」という処でも「これは面白い」と働く。脳 にある内部モデルと違う差が感ぜられると脳回路にθ波が生じ、 脳内物質としてのドーパミンやアセチルコリン等が出て来て、脳は 修正モードに入り、ルーチンワークとは違う差を検出し脳の回路 を修正するクリエイティブな働きをする。これにも同じように快楽 を感ずるニューロンがある。これが所謂発展的学習につながる 「脳力」となる。物事を論理的に考え、理論的に説明出来る力を 身につけ、課題を発見して、解決する力はこゝから出てくる。
 江崎玲於奈博士の云う「まねび」「まねとび」はこれを云う。
 人間だけがモノマネを見て笑える。このことは「模倣」が人の 本能的好みであると共に、人にとって特別の意味を持つものであ ることを示している。
 大脳皮質の前頭葉にあるミラーニューロンのシステムは、他 の人の心を読んだり、心を感知する働きをするが、この能力は社 会性を育て世界を広げてくれる。読書をすることでこの力は更に強 化されよう。
 自調自考の幕張生諸君、大いに「脳力」を鍛えよう。

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平成19年(2007)5月10日改訂