秋酣(たけなわ)。霜降、立冬と続くこの季節を楓(もみじ)蔦(つた)黄ばむ、山粧(よそお)うと云う。
十一世紀中国北宋時代の郭煕(かくき)(画家)によると、春の山のさわやかな初々しさは、山笑う。夏の青青(あおあお)として瑞々しいさまは山滴(したた)る。冬の山の枯れた寂しさは、山眠ると云う。
まるで山が生きているように、そこに宿る草木が生い茂っては、色づき、枯れ、また芽吹く一年を言葉に云い表わすこのような気付きを大切にしたいものだ。
都会では、近年売上額がクリスマスより大きくなったと云う「ハロウィーン」の季節を迎えた。子供達にとって楽しみな「Trick or Treat」と菓子をねだって歩く時。
日本では古来より「秋祭り」の時である。山から降りて田を守護してくれた神が山に帰られるのを送り稲の収穫、新穀を神に供える感謝祭が「秋祭り」で、夏祭りが禊(みそぎ)、祓(はらい)の行事であるのと趣を異にする農村行事である。
黄葉(もみちば)の過ぎまく惜(を)しみ思ふどち
遊ぶ今夜(こよひ)は明けずもあらぬか
万葉集 大伴宿禰家持
北半球で秋がはじまるこの時期、国際連合総会等国連関係行事が一斉に始まる。
途上国対象十五年間の「国連ミレニアム開発目標」の終了年の今年、総会注目のテーマは、新たな目標を明示する「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択であった。
貧困や飢餓の撲滅、格差の解消・環境保護を含む17分野169項目の目標が盛り込まれた野心的な計画で、今回目標達成には先進国も含み道義的責任があることを宣言している。
人間開発指数を提言した国連はいよいよ全世界の「持続可能な開発」に向けて十五年間の課題に取り組むこととなる。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界記憶遺産」も話題となる。
日本からは「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」(京都)と、「シベリア抑留資料」(舞鶴市)の二件が提案・採択された。ロシアからの反撥が心配された「シベリア抑留資料」は、ロシア・ナホトカ市と舞鶴市の間で了解されていたので紛糾していないが、採択された中国提案の「南京大虐殺三十万人」が日本との間で問題となっている。「歴史的事実の可否」というより三十万人という人数の問題で政治問題化し、ユネスコ負担金の問題迄出て来ているのが心配である。ユネスコは世界記憶遺産だけ仕事にしているわけではなく、他にも多くの重要な分野で世界的活動を支えているので、大変心配している。円満におさまってくれればと思う。
次に国連気候変動枠組条約第21回締約国会義(COP21)の話題。パリでの会議で世界の温暖化対策の柱を作りだせるか協議中。先進国・途上国の正式合意が目指されている。
更に平行して国際的ニュースとして「ノーベル賞受賞者発表」があった。これで二〇〇〇年~二〇一五年の十五年間に日本人の受賞者は十六名になり、世界で米国に次ぐ堂々二位の受賞者の数となる。日本中が明るくなった。重要なグローバルニュース満載。
そこで二十一世紀グローバル社会で活躍を期待される若者達にとって極め付きのニュースが「ラグビーワールドカップ大会」での日本チームの大活躍であろう。今迄七大会で一勝の日本が今大会三勝した。日本的特色を活かしつつ、外国籍(チーム31人中10人)の人達の特徴を活かした作戦の成功。因みにサッカーでは卒業生、闘莉王選手の帰化(二〇〇三年)以来、日本では帰化のニュースはほとんどない。
多様な文化の交流が新しい価値を持った文化を生み出した。日本ラグビーチームが示してくれたこうした成功実例は、二十一世紀のグローバル社会で活躍することを期している若者達にとって大変参考となるものである。つまり日本人としては、まず私達の文化的アイデンティティ(特性・個性)を確実なものとして理解し身につけ、それに違った文化多様性(Diversity)との交流がなされることで、結果新しい価値を生み出す。このことの重要性に注目しよう。
今日本で採用が検討されている生徒の質問と討議を中心とする授業、アクティブラーニングもアメリカの大学発である。二十一世紀に活躍する若者達の学ぶ本学園の教育目標は「自調自考」。そして、その学園の行事である研修旅行は現地集合、現地解散を特色とするとともに、その行き先は日本の文化成立過程を歴史的にさかのぼって検証していくという考えの下につくられている。
自調自考生、どう思う。