えんじゅ:311号  


 

 

地区別保護者懇談会(前期)報告


 六月十日の日曜日、前期地区別保護者懇談会が開催されました。季節はずれの台風が近づくなか天候が心配されましたが、講堂は、七百名弱の保護者でほぼ満席となりました。  全体会では前回同様、前半は校長から地区別懇談会を開催するに至った経緯や学園の教育目標、学校の現状について説明いたしました。   後半は、本校の二十五期生で現在ボストン・コンサルティング・グループにお勤めの黒澤俊哉さんにお話を伺いました。  渋幕中学・高校時代の野球部や東京大学野球部の主将で活躍した時の話を交えながら 一、どんな中高生活だったか?  そこで学んだことは? 二、自分で考えること/好きなことを追うことで、何が得られるか? 三、どうやったら好きなことが見つかるか? という3つのテーマに沿って四十五分の講演と会場からの質問に答えて頂きました。    続く午後からは各地区に分かれて懇親会が開催されました。  また今回も制服リサイクル品を全地区で提供することが出来ました。引き続きご協力頂きますようお願いいたします。  なお、当日の質疑応答や事前に頂いた質問への回答については、地区別保護者懇談会報告書をご覧下さい。
 

祝 文学賞受賞


 本校十九期生の彩瀬まるさんの『くちなし』が「第五回高校生直木賞」に選ばれました。  「高校生直木賞」とは直近一年間に直木賞候補となった作品の中より、高校生の視点から最も優れた作品が選ばれます。『くちなし』は様々な愛の形を独創的な視点で描いた作品です。  さらに、本校二十期生の小川哲さんが本年度の「山本周五郎賞」を受賞しました。受賞作は『ゲームの王国』というSF小説で物語性の豊かさを重視する山本周五郎賞に、本格的なSF小説が選ばれるのは異例のことだそうです。  どちらも図書館で所蔵しています。活躍中の先輩お二人から在校生の皆さんに向けてメッセージをいただきましたので、そのまま掲載します。
 

教室の先の世界
19期生 綾瀬さん


 学生の頃に思っていたのは「スタバでパソコンを開いて優雅に仕事している人になりたい」でした。スーツを着るのがイヤだったのと、好きな場所で仕事する自由が欲しかったからです。現在その願いは叶い、家でもカフェでも好きなところで仕事を出来るようになったのですが、頭の中は「〆切まであと何日で、一日に何枚書かなくちゃいけなくてあわわ!」と優雅さからはかけ離れています。ただ、出版業界に入って一番よかったのは「私と似た変な人だ!」と感じる出会いが多いことです。私と同じ、本が好きで、ずっと触り続けてきて、それで生計を立てようと考える、教室では一人も出会えなかった人ばかり。こんなところにいたのか、と離ればなれになっていた同族を見つけた気分になります。仕事とはそういうもので、自分が好きなもの、頑張りたいと思う分野には、自分に近いなにかを持っている人が集まってきます。「この人とは、ずっと一緒に頑張っていくんだろうな」という運命の出会いも、あります。  あなたはどんな人ですか。  自分の内側にたくさん耳を澄ませ、道を選び、いつか仲間を見つけて下さい。きっと楽しい人生になります。
 

疑うこと、考えること
20期生 小川さん


 小学生のとき、「七転び八起き」という言葉を知り、僕は疑問に思いました。日本語としておかしいと思ったのです。七回転んだら起き上がる回数は七回のはず。しかしそれでは「七転び七起き」です。起き上がる回数が一回多いのは、どうしてだろう。気になって、担任の先生に聞きましたが、「ことわざとはそういうものだ」と言われました。その場では納得してしまいましたが、やっぱり気になります。他の大人に聞いてみました。ですが、彼らは僕が納得する答えを与えてくれませんでした。  学校の図書館で、故事成語の辞典を読みました。そこに答えが書かれていました。人間は初め、赤ちゃんとして生まれます。つまり僕たちの人生は転ぶところから始まるわけではなく、起き上がるところから始まるのです。  「虹はなぜ七色なのか」「青、赤、白、黒は『い』をつければ形容詞になるのに、他の色はそうでないのはなぜだろうか」など、僕はいろいろな疑問を大人に聞き、彼らは答えを知らず、結局自分で調べました。そう、「自調自考」です。  みなさん、たくさん疑って、たくさん考えてください。それが、何よりも重要なことだと思います。